第17話

 私がその場を立ち去ろうとした時、教室から彩加が出てきた。

「あんたさ、大智ってそこそこ倍率高いよ。あんたみたいな地味な子に興味ないでしょ」

 私はなにも言わなかった。いや、黙り込むことしか私にはできなかった。

 まだ、私に植え付けられた二人への恐怖心は消えていないのだから。たかが、悪口を浴びせられ続けただけなのに私の心は本当に脆いものだと、今になって実感した。

 なにも言わず帰ってしまえばいいのかもしれない。が、今引いてしまえばなにも変わらない気がして帰るに帰れなくなっていた。

「どうしたの?」

 背後からの声に私は驚いてしまった。

「大智か。大したことないんだけどなんか心が文句言ってくんの」

 私と話している時とは圧倒的に違うぶりっ子姿に私は吐き気すら感じつつあった。

(あざといな)

「あざとい」

 私の心を代弁するかのように大智が呟いた。その発言は私達三人を色々な意味で黙らせた。

 しばらくしてあざとさ全快の結ちゃんが話し始めた。

「そ、そうよね。心は下心が見え見えでさ、ていうか怖いよね~」

 結ちゃんの苦し紛れの言い分や露骨に作られた笑顔は虚しさをよりいっそう引き立たせていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る