第15話

「ねえ、大智…」

「ん?」

 私の心は既に答えを決めていた。恋と言う感情には決して逆らう事ができないのだから当然の答えではあるが、その前に私はやるべき事があった。

「明日、返事するから今日はもう帰って」

 そう言い残して、私は校舎の中へと走り始めた。

 私は間違っていた。

 他人と好きな物が被ってしまったら私が我慢すれば平穏に終わると思っていた。が、その理論が通用するのはあくまでも『物』限定だ。

 人と物は違う。

 物と違って人はこの世に一人しか存在しない。

 物と違って人は同じ人を作り出せない。

 物と違って人は私個人の感情よりも自分の感情で動いている。

 結ちゃんの好き人が私と同じだと知ったあの時、私がとるべき本当の選択は諦める事じゃなくて欲しいなら欲しいと正直に言うことだった。

 校舎内の階段をかけ上がる最中、教室からの笑い声が聞こえてきた。

 ドアを開けると結ちゃんと複数の男女がおしゃべりをしていた。

 私は勇気を振り絞って声を張った。

「結ちゃんっ!」

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