第11話
帰りのホームルームを終えた私は誰よりも早く教室を出た。
誰からも目をつけられぬように逃げるようにと。
「おいっ!」
誰よりも早く出てきたのにも関わらず私は呼び止められてしまった。
無視してもよかったのだろうが、私を呼んだのが男だったため結ちゃんではないと確信し私は足を止めていた。
「朝のやつとか結香の仕業?」
「あー、いや」
私が話ながら振り替えるとそこに立っていたのは大智だった。
「だっ、大智!」
「なんかお前ら昨日は空気悪かったろ?」
本当に大智は周りがよく見えている。こういうところが私は好きだった。
「結ちゃんは関係ない!」
そう言い残して私は走り去った。
素直に頷けば、大智は私の話を聞いてくれただろう。でも、そうすることで結ちゃんに対する印象は悪くなってしまう。
今さら結ちゃんに同情などしているわけではない。私は怖かった。今日よりも酷い事をされるのがただ、怖くて嫌なんだ。
普段目立たない私がクラスメイトに注目されたり、今日だけでもううんざりだ。
私が大智をどんなに好きでも、大智がどんなに優しくても私が選べる選択は一つしかないのだから。
愛から生まれた憎しみ程厄介な感情はないのだから…。
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