第10話

 教室に戻ると黒板の前には人だかりができていて、その中心には結ちゃんがいた。

(消しておけばよかった)

 私の心の奥から小さな怒りと、恥ずかしさが込み上げてくるのを感じた。

 周囲の人からの視線が全て私を指しているように感じて、何よりも黒板を見ているであろう大智がどう感じたのだろうか。

 というよりも、嫌われた事には変わりがない。肝心なのはどの程度嫌われてしまったのかと言うところだ。

 そう思いながら一時間目はほとんど大智を見ていた。

 いつも通り授業だけは長く感じた。が、今の私にとってこの授業という場は唯一心の休まる時間でもあった。

「心さー、授業中大智ばっかり見てて内容頭に入ってんの?」

 程よく周囲に聞こえる声で話しかけてくる結ちゃんの友達である彩加のせいで私はまた注目されていた。

「見てないよ」

「そっかぁー」

 ニヤニヤとした表情や行動。それらに苛立ちを覚えたがこんな日常が続いていくのかも知れないと思うと怖くて何も言ってやれなくなった。

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