第5話

その後、私は体調が優れないからからという仮病をつかい家路を歩き始めた。


 家路の途中に見えるごく普通の川沿いに私は寄り道をした。制服を着ている事などお構いなしに草むらで腰を下ろした。


 流れる川の音に心が、少しずつ癒されていくのを感じていた。そして大きな溜め息をついた。


「私って…いや。これでいいんだ私はずっとこのままで」


 そう口にしたら少しだけ気持ちが軽くなった感じがした。


「心はまだダメだよ」


 突然の声に後ろを振り返った。


(聞かれた?)


「心の学力をキープしてたら将来働けないよ?」


 私の前には問題の種である張本人、私の好きな大智が立っていた。学校でも普通に話したりするし仲も悪くはないが放課後にこうして話すことは今まで一度も無かった。


「大智、なにしてんの?」


「なにってこれから塾ですけど」


 どこか嫌そうな顔をする大智に「行きたくないの?」と訪ねると真剣な表情で「うん」と頷いた。


「へー、がり勉君も勉強嫌いか~」


 大智をからかいつつも私は少し、いやかなり幸せな気分に溢れていた。

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