第4話
放課後、私と結ちゃんは和気あいあいと話ながら地元の図書館へと向かった。
学校での愚痴、テレビの話、好きな歌手グループの話、と他愛もない会話をしたあと結ちゃんの表情は少しだけ暗くなり、新たな話題へを切り替わった。
「心は、なんで勉強嫌いのくせして勉強するの?」
突然の質問に私はすぐに答えてあげる事が出来なかった。
「成績悪いと格好悪いじゃん?」
私は嘘と本当の間を突く卑怯な返答をした。
「誤魔化さないで」
私を見る結ちゃんの目に抗える余地もなく、親友なのだから、と私は素直に話すことにした。
「私の好きな人がね、そこそこ頭良いの。だから私も恥ずかしくない程度には学力を上げたい」
そこそこ頭が良いなんて、多数の選択肢を与える私はやっぱり卑怯な女なのかもしれないと思った。
「それって大智?」
「えっ、違うけど…」
突然出てきた好きな男の子の名前に驚いたが私はすぐに否定した。
「大智なんだ。心の慌てぶりとその赤面を見たら分かるよ」
結ちゃんには私の嘘なんて見透かされてしまっていた。
「う、うん」
いさぎがいい。なんて、私自身も思うが誰かに聞いてもらいたい気持ちもどこかにあったのかもしれない。
打ち明けた途端に私の胸が高鳴り、この気持ちを分かってもらいたいと思うようになった。
「それでね、、、」
話し出す私に向けられた結ちゃんの冷えきった視線に私は言葉を失くした。
「私も大智が好きなんだ。だ、だから!」
「き、気にしないでよ。私よりも結ちゃんの方が似合ってると思うし、頭も良いし私より可能性あるから応援させて!」
(あれ?何言ってるんだろう私)
「本当?」
「うん」
「ありがとう!」
そう言って喜ぶ結ちゃんは幸せそのものだとすら感じられた。そんな中手を取り合い作り笑いを浮かべる私の心は勝負せず負けたというやるせない気持ちでいっぱいだった。
けど、こうすることが私の生き方。誰も嫌われず当たり前の日常を保つ唯一の方法だと私は思う。だからこそ、これでいいんだ、と私自身に言い聞かせていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます