第3話


「結ちゃん、どしたぁ~」


 半開きの目を擦り、瞼を上げ彼女の顔を見た。ぼんやりと見える彼女はそこそこの可愛さで、はっきり目にするとかなりの美人さんだ。


「苦手な英語で寝てたら成績落ちるよ」


 その言葉で朦朧【もうろう】とした私の頭は完全に目覚めた。


「ど、どうしよう…」


 英語はいくら勉強しても私には不向きでそもそも好きでもない。だからこそ、授業への関心があると装い成績簿の関心、意欲、態度、という項目をAにする必要があった。が、居眠りで五十分もやり過ごしてしまうとは、AどころかBすらも怪しくなってしまう。


 こういった項目は頭のよさや、関心、意欲よりも先生からの好感度が大きく左右すると私は思う。だから嫌われるような居眠りは避けなければいけなかった。


「け、けどまだ一回目だしね!」


 そう言ってあははと笑う私を見る結ちゃんの深刻な顔つきに私は恐怖を覚えた。


「とりあえず、今日の分の英語教えるから放課後図書館ね」


「ありがとう。助かる」


 私の好きな人は頭が良い。だから、私もバカだと思われるわけにはいかなかった。


 これが、勉強嫌いの私が勉強に取り組む一番の、唯一の理由だ。その理由は言っていないが結ちゃんはいつも私を助けてくれる。だからというわけではないが、いつも私を気にかけてくれる結ちゃんはやっぱり私唯一の親友なんだと改めて感じていた。

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