第11話 いのち短し恋せよ少女

「おいプリンセスはどこ行ったんだよ!!もう少しでライブが始まっちまうぞ!」

楽屋でイワビーが声を荒げた

「まさか雨が止んだ途端にどっかに行くなんて…」

コウテイが不安げに言う


「ダメです!一応会場の周りを探したのですが、どこにもいません!」

ジェーンが楽屋に入って来た


メンバーが慌てる中一人だけぐっすり眠っていた…

「むにゃむにゃ…もう食べられないよぉ…」

フルルが寝言を言う

するとイワビーが

「おいフルル起きろ!そんな場合じゃねえんだよ!」

フルルを揺する


「んにゃ?どうしたのみんなー」

目をこすりながら尋ねる

「プリンセスが居なくなっちまったんだよ!もうすぐライブが始まるって時に!」


しかしフルルは

「あぁ、それなら大丈夫だよー今のままだとみんなに迷惑がかかるから四人で頑張ってだってさー」

のんびりと言った

「はあッ!何勝手な事言ってんだよアイツ!…で、どこに行ったんだよプリンセスは」


「しばらく一人になりたいから山に行ってくるってさー」

フルルがそう言った瞬間

ドタタタタタ…

足音のようなものが楽屋から遠ざかっていった

「誰か居たのか?」


するとマーゲイが楽屋に入って来て

「今カズヤさんが凄い勢いで走って行ったのですが…何かありました?」




「みんな怒ってるわよね…こんな自分勝手な事して」

プリンセスは崖から海を見ていた

「本当に何やってるのかしら私、このままじゃダメよね、ライブ会場に戻らなくちゃ!」

パシィッ!

プリンセスは自分の頰を叩いた

「今から走れば間に合うわよね!」

プリンセスはライブ会場そに戻るため走り出した、その瞬間

ガララ…

「え?」

突然足場が崩れた


プリンセスは落ちそうになるが


ガシッ

咄嗟に断崖に生えていた木の枝を掴んだ

「うぅ…」

プリンセスは宙吊りの状態になった

「こんな時どうしたら…いや、バチが当たったんだわ、きっとそうよ…いつも自分一人で勝手な事してみんなに迷惑かけて…」


ミシィ…

プリンセスが掴んでいる枝が音を立て始めた

そして

バキィッ!

枝が折れプリンセスは落ちた




ガシッ

しかし何かがプリンセスの手を掴んだ

「そんなどうして?」

プリンセスは驚きの声を出す


「はぁはぁ…全く、雨が降った後は地盤が緩んで山は危ないってのに」

息を切らしたカズヤがプリンセスの手を掴んでいた




カズヤはプリンセスを引っ張り上げた


「はぁ…流石にライブ会場から走ったら疲れた」


「どうして?」

プリンセスがカズヤに聞く

「何?」


「どうして助けたの!私なんかどうでもいいんでしょ!それなのにどうして!」


カズヤは

「なんで…か…」


オオカミから聞いた男の言葉を、トモカズかばんに言った言葉をそのまま口に出した




「惚れた女護んのに理由なんかねえんだよ」





それを聞いたプリンセスは固まる


カズヤは

「なんていうか正直わからないんだよね、好きだとかそういうのがさ、それに怖かったんだ…あんたと僕は違う、それであんな言い方を…」


「そうだったのね……ねぇカズヤお願いがあるんだけどいいかしら?この後のライブが終わったら楽屋に来て欲しいの、嫌だったら来なくてもいいけど…もし…もし来なかったら私は綺麗さっぱり諦めるわ…だから、貴方もはっきりして欲しいの…」


するとカズヤは

「だったら早く会場に戻らないとね、メンバーも客も待ってる」






数時間後ライブを無事に終えプリンセスは一人楽屋で待っていた




ポン…

誰かがプリンセスの肩を叩いた


プリンセスは振り向き……


恥ずかしそうに笑った




姫鳥恋愛篇

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