第84話 何となく


「児玉さぁーん!ダブルプレーっすよ、ダブルプレー!すげぇーっすよ!痛てっ」

ベンチに戻ると池崎くんが足が痛いはずなのに立ち上がって、泣きながら言った。

「先輩!やりましたね!凄かったですよ!」

町村さんも泣いている。


僕はベンチに座った・・・

心臓の音が聞こえる・・・

物凄く早く鼓動を打っている・・・


僕の前に打球が飛んできた・・・

僕は捕れると思って、必死に走った・・・

打球が目の前に来て、グローブを出した・・・

高坂くんが中継に入っていて、僕は高坂くんにボールを投げた・・・

何となくそんな覚えがある。


みんなが喜んでいるのだから、きっとアウトにできたんだ。

良かった。

僕はまだ、何がなんだかわからないまま座っていた。


「児玉!次、お前だぞ!」

松島くんがそう言った。

何が・・・?

そうだ。

今は9回表、攻撃中だ。

僕の打順だ。

行かなきゃ。


「この勢いでヒット打って来いよ!」

高坂くんにそう言われた。

「う、うん」

僕は何となく返事をした。


「児玉さん!ガツンと一発、あの時の打球お願いします!痛てっ」

池崎くんが妙に興奮している。

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