第83話 何が何だか


「バックホーム!」

松島くんの声が聞こえた。

3塁ランナーがタッチアップからスタートを切っていた。


「児玉!」

高坂くんが中継に入っていた。

僕は自分が打球を捕ったことさえ、よくわからないまま、

必死で高坂くんへボールを投げた。


ボールは高坂くんの胸へ。

捕った高坂くんはすぐさまホームへ送球。

ランナーはホームベース直前。

タイミングは微妙。

ボールは松島くんのミットに収まり、松島くんはタッチに向かう。

ランナーはホームベースへ向けて足から滑り込む。

砂埃が上がる。

審判がホームベースをのぞき込む。

松島くんのミットがホームベースの手前でランナーの足を止めていた。


「アウト!」

3アウトチェンジだ。

ベンチに戻らなきゃ。

僕は何が起こったのか、自分が何をしたのかもよくわからないまま

とにかくベンチに向かって走っていた。


途中、高坂くんが僕を待ち構えていて、僕の首に腕を回し

「やったな!児玉!ナイスプレー!」

続いて大村くんが

「ナイスプレー!児玉さん!助かりました!」

さらに松島くんが

「ナイスだ児玉!やればできるじゃねぇか」

チームメイト達が次から次へと近づいてきて

僕の頭を叩いたり、肩を叩いたり、おしりを叩いたり

何が何だかわからないまま、僕はもみくちゃにされていた。

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