第85話 未だに


なんだかみんなやけに興奮していて、僕に期待しているみたいだった。

なんで僕にそんな期待を掛けているんだろう。

僕はなんとなくそう思いながらバッターボックスへ向かった。


僕は審判に一礼をして、バッターボックスに立った。

まだ心臓が物凄い速さで脈を打っている。


「ストライーク!」

初球をあっさり見逃してしまった。

そうだ。打たなきゃ。

そう思った時には既にピッチャーは2球目のモーションに入っていた。


「ストライークツー!」

しまった。

またバットを振ることすらできなかった。

バットを振らなきゃ。

打つんだ。


3球目、ピッチャーが振りかぶった。

僕はとにかくバットを振るという一心で構えた。

ピッチャーが投げる。

球種もコースもよくわからない。

僕はバットを振った。


「ストライーク、バッターアウト!」

三振。

こんなにもあっさりと。


「どんまいどんまい!」

ベンチに帰ると、みんなまだ興奮気味で、

僕が三振したことなど無かったことのようだ。

僕はベンチに腰を下ろした。

まだ心臓の音が物凄い大きさで聞こえてくる。

三振をしたことは悔しかった。

でも、あの守備から未だに、何が何だかわからないままだった。

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