第79話 だったらお前が


ざわついていた球場が一瞬静寂に包まれた。

そしてまたざわざわと騒ぎ始めた。


僕は声のした方を見た。

ライト側の内野スタンド上段に、上山くんの姿があった。


「あの野郎!」

高坂くんが上山くんを睨みつけている。


「相変わらずへたくそだなぁ。

 これじゃあ何のために練習してきたのかわかんねぇな。

 一緒に練習してくれた奴らにも申し訳ねぇだろ」

「うるせぇぞ!上山!」

高坂くんが言った。


上山くんはマウンドの方を見て

「大村は一生懸命投げてんのにな」

今度はベンチの方を見て

「池崎は怪我までしてチームのために頑張って」

高坂くんを見て

「高坂と松島がせっかく点数取ったのにな」

「上山・・・」

高坂くんは複雑な表情で上山くんを見ている。

「それ全部台無しにするつもりか!」

僕は何も言えずにうつむいていた。


「顔上げろ!」

上山くんの言葉に、僕が顔を上げると

「お前は野球をやりたいんだろ!試合に出たいんだろ!

 だったらこの場をもっと楽しめよ!自信持ってやれよ!」

「上山くん・・・」

「お前以上に練習してきた奴いるのか?いねぇだろ!

 だったらお前が一番だ!

 練習は絶対に裏切らねぇ!自分のしてきたことを信じろ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る