第78話 やってしまった


やってしまった・・・

こんな簡単なフライを・・・

どうしよう・・・

ゴメン、大村くん。ゴメン、池崎くん。ゴメン、松島くん。ゴメン、高坂くん。

ゴメン・・・


「児玉!後だ、後!」

高坂くんの声が聞こえた。

高坂くんがこちらに走って来る。

そうだ。まだプレーは続いている。

僕は慌ててボールを拾い、高坂くんへ投げたが、大きく3塁側へ逸れてしまった。

高坂くんが素早くダッシュして、何とか捕球し、ランナーは3塁でストップ。

バッターランナーも1塁でストップした。


高坂くんが塁審にタイムを要求し、こちらに向かって走って来た。

スタンドはざわついており、金子くんたちの笑い声も聞こえる。

光南学園のベンチでは何やら監督が選手達に指示を出している。

ベンチでは監督、池崎くん、町村さんが心配そうにこちらを見ている。

高坂くん以外の内野手陣もマウンド上に集まり、心配そうにこちらを見ている。

レフトの高橋くん、センターの千葉くんはこちらに駆け寄って来ている。


「児玉!どうしたんだよ」

高坂くんが笑顔で言った。

「ゴメン・・・」

「あんな打球、普段のお前なら捕れてるはずだ。いくらなんでも緊張し過ぎだろ」

「う、うん・・・」

「そうそう。楽に行こうぜ、楽に」

高橋くんも笑顔でそう言った。

「俺がバッチリフォローするから、心配すんなって」

千葉くんも笑顔でそう言った。

みんな僕のために気を使ってくれている。そんなみんなの励ましが逆に辛かった。


その時、スタンドから叫び声が響き渡った。

「何やってんだ!へたくそ!」

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