第19話

冒険者登録も終えたし、街でも見て回るか。


「める、お買い物とかする?」

「うん!いっぱい買いたいのあるし、いっぱい食べたい!」


........そういや、お金足りなくないか?


「お金........ないんだけどさ、誰か........」

「ボクの鱗売って、お金稼げばいいよ!」

「え!?絶対サラ痛いって!そこまでしなくてもいいよ........」

「大丈夫だよ!」


そう言ってサラは、痛い顔ひとつせず、羽根付近の鱗を剥ぎ取った。血は流れない上に、すぐに新しい鱗が生えてくる。


「ほんとに大丈夫?」

「大丈夫だよ!ボクの手を離れたら、元の大きさに戻るから、注意してね!」


サラは、僕に鱗を手渡した。


「意外と重いな........!」


手のひらサイズだった鱗が、どんどん大きくなっていく。やがて、持ちきれないほど大きくなった。


「重い........よ.....」

「私が代わりに持ってあげる!」


めるは軽く鱗を持ち上げた。ステータスはあんま変わらないのにな........アビリティとかって凄いんだな。


「じゃ、行こ!」

「分かったよ。じゃ、僕達は色々見て回るから、日が沈み始めた頃に、ここ集合ね。」


ギルドは大きいから、待ち合わせ場所にはうってつけだ。


「帰りはどうするの?........そもそもお家ないでしょ?私のお家来る?」


いくら見た目が幼いとはいえ、大人の女性の家にお世話になるのは........


「ボク泊まる!」

「私も!」


僕も泊まるしかないじゃないか........


「じゃぁ僕も........」

「分かったわ!夜を楽しみにしててね♪」


変な言い方だな。勘違いする輩が出てくるぞ。


「泊まるとこも決まったし、んじゃ、いってくるね。」

「いってきま〜す!」

「おう!俺はこのまま家に帰るからよ、なんか用があったら、明日でもギルドに来いよ!俺は大体いるからよ!」


観光か........どこ行こうか。まぁ歩きながら考えるとするか。


「とりあえずそれ売らないとね。」

「どこで買い取ってくれるかな?」

「んー。やっぱギルド?なんか素材買取なんちゃらってとこあったし。」

「じゃ、戻ろっか!」


なんで言ってくれなかったんだ。まぁいっか。


「重くない?」

「うん!まだまだ大丈夫だよ!」


相変わらず凄いな。なんだ?後ろから付けられてる気がする........めるに伝えたほうがいいか。


「ねぇめる、なんか後ろからついてきてない?」

「私もそう思う!確認してみてよ!」


コソコソと伝えた。気づかれたら困る。


「じゃ、見るよ?」


後ろを向いて目に入ったのは、ごつい男。


「さっきからァよ、でっけぇもん持ってんなァって見てたんだがよ、それくれねぇか?高く売れそうだからよォ!」


お決まりの絡まれるやつか?生憎僕達は俺TUEEEEでは無い。勝てる見込みはあまりない。戦わないのが得策だろう。


「あの、これは僕の友達に貰ったものなので、見ず知らずの方に渡すのはちょっと........」


男の顔が引き攣る。


「んだとォ?いい度胸してんじゃえねぇかよ。」


これは確実に怒っている。


「怒ったらダメ!これは私達のだから絶対に渡さない!」


この言葉も逆に怒らせるだけだろう。


「ン?女がわーわーうるせェんだよ!」


男は鉄鎧のよな筋肉でめるを殴った。めるは後方に吹っ飛ばされる。


「める!」


僕がめるの方へ行こうとしたが、男に阻まれる。


「オイ!どこ行こうってんだ?元をたどせば、おめェらが俺に渡さねぇのがわりぃんだろ?」


どんだけ自己中なのだろう。男に合わせるしかないか?


「本当にすいませんでした。鱗はあげます。ここはどうか許してください。」


深く頭を下げ、慣れない敬語を使って言った。


「くれんのか?あんがとよォ!」


頭に強い衝撃が走った。体に力が入らない。


「じゃぁ貰ってくゼ」


めるの手から強引に引き離す。めるに意識は無く、そのまま倒れた。


「........」


意識が朦朧とする。異世界に来てから二度目だ。本当についてないな。


周りには人だかりができているらしく、ガヤガヤと声が聞こえる。


「あっ........」


助けを求めようとしたが、言葉が出ることは無かった。

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