第13話
僕らはおやっさんに着いていく。一般用の入口より、西に来たところでおやっさんは止まった。
「お前ら、ここに入るからな。まだ決まったわけじゃねぇから、少しは気を楽にしとけ。」
おやっさんは鉄製の厳重に鍵をかけられた扉の前でそう言った。この状況で気を楽にしろと?相手のペースにのせられたら嫌だ。緊張感をしっかり持とう。
「おい!入れてくれ。」
大きめの声でそう言うと、内側から鍵が外され、重い扉がギーギー音を立てながら開く。
「私たちどうなるのかな?」
「いざとなったら、ボクがみんなを守りながら逃げるよ!」
「それもいいけど、自分から喋らないでね。めるたちはすぐ余計なこと言うから。」
逃げるより、ここで確実に身の潔白を証明しておいた方が、これから先安全だろう。
「お前ら、着いてこい。決して、無礼を働くなよ。」
無礼を........か。高い身分のやつでも居るのだろうか。おやっさんに着いて中に入る。応接室の様な、しかし、石造りで堅苦しい部屋だった。奥のソファには端正な顔立ちの男が座っている。
「連れてました。こいつらが疑わしき者です。」
おやっさんの口調が丁寧になる。
「ここに座れ。」
僕達は手前側のソファに腰をかけた。とても座り心地がいい。男が口を開いた。
「君たちかね?この国を崩壊させようとしているのは。」
そんなことは1ミリたりとも思っていない。正直に言えば解放されるだろうか。
「いえ、僕達はただ、この国の観光、冒険者ギルドに登録をしに来たんです。」
「君たちは冒険者になりたいのかな?」
「はい。見ての通り異世界人なものでして、この世界の事はよく知らないんです。なので、たくさん冒険してこの世界を知りたいな、と思っています。」
僕は正直に話した。嘘はひとつもついていない。はずだ。
「そうか。じゃあ、その見かけない生き物はなんだい?」
ここでドラゴンと言ったら確実に終わるだろう。嘘をつくしかないのか。
「この生き物は、ここの国に向かう途中で、懐いてきたので一緒に行動することにしたんです。」
「なるほど。」
間が空いた。石と石の間からのすきま風が体を包む。
「君は嘘を言ってるね。忘れたから誤魔化した訳ではなく、故意に隠していることがあるね?」
なぜバレた。........アビリティがある世界だ。真偽を見抜く力があってもおかしくない。
「もし、君が隠し通すというのなら........」
目の前の男は首を切るジェスチャーをした。嘘をつき通したら、死が確定だ。なら、少しの可能性にかけよう。
「すいません。この生き物はドラゴンです。」
正直にバラした。
「ドラゴンね。なら、喋れるよね?」
サラの方を向いて言う。サラの眼が変わった。いつものキラキラした眼ではなく、鋭い、見ただけで圧倒されそうな眼だ。
「あぁ、如何にも、ドラゴンで間違いない。」
いつものはふざけてるのか?と言うくらいの変わりようだ。こんな喋りもできたのか。
「そうか。ひとつ聞いてもいいかな、君たちは本当に観光の為に来たんだね?」
「私は、この者たちをこの世界の住人にするべく、この国へやってきた。観光も含めている。」
男はサラの眼を見つめた。数十秒たった後に口を開いた。
「話してくれてありがとう。疑って悪かったね。カイ、君も謝って。」
「疑ってすまなかった。」
おやっさんの名はカイというらしい。とりあえず、難は逃れたか。
「僕達はこれからどうすれば?」
「君たちの疑いは晴れた。存分に楽しんでいってくれ。頼んだよ。」
男はカイの肩を軽く叩くと目の前から一瞬で消えた。転移魔法だろうか。
「おい、こっちだ。」
カイの後に付いていく。僕達が入ってきた扉とは別の扉を開けた。その扉は、木製で、年季が入っている。
「ここから出ればいいんですか?」
「そうだ。疑って悪かったな、すまん。それと、絶対にドラゴンを暴れさせるなよ。」
僕達より、サラの方が強い気がする。まぁ危ないことは注意しておこう。
「分かりました。では。」
僕達は、扉から出た。そこに広がっていたのは、中世の様式に似た世界だった。
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