第12話

あれからだいぶ歩いた。前の世界だったらもう歩けなくなっていたかもしれない。


「あっなんか見える。」


ザルポネアに向けて、長蛇の列が出来ていた。待たないといけないのか........サラにいい方法はないか聞いてみた。


「サラ、すぐに入れたりしない?」

「無理だよ!ちゃんと並びな!」

「え〜早く入りたいよぅ!」


めるは駄々をこねる。ぽかぽかと地団駄を踏みながら、手をぷんぷん振り回している。かぁいいな。


「める、ちゃんと並ぼ。変な入り方して捕まったらなんも出来なくなっちゃうよ。」

「それはヤダ!私並ぶ!」


めるの扱いには慣れていると思っている。自称めるマスターだ。


「じゃ!最後列に並ぼうか!」


僕らは渋々長蛇の列に向けて歩く。サラはそうでも無いが。


「色んな種族がいるんだなぁ。」


歩いてると、獣人らしき種族や、エルフ、悪魔?らしき種族などもいる。争いとかは起こらないのか?


「見る限り、たくさんの種族がいるけど、争いとか起きないの?」

「ここはね!別名【楽園エデン】って呼ばれてて、ここではどんな種族も平等に扱われるんだ!」


エデンか。ここではか。他の国や、地域では格差などがあるのだろう。


「あっ進んだよ!」


やっと3人分くらい進んだか。あとどれくらいかかるのだろう........


........あと5人くらいか。........だいぶ遠く、僕達が飛んできた山の方から、馬車が猛スピードで走ってくる。砂を巻き上げ、石を跳ね飛ばし、馬車を軋ませながらむかってくる。


「サラ、あの馬車は何?」

「あれはね、ザルポネアの王族の馬車だと思うよ!よく見て見てよ、あそこに紋章があるでしょ?」


異世界に来て少しは良くなった目を凝らす。石であろう壁に、ゴツイ城が描かれている。この国をイメージしたものか?


「え!王族の馬車!?私お姫様とお友達になりたい〜」

「いつかね。」


ここは適当に返しておく。変に希望を持たせると、何をしでかすか分からない。


「あっ僕らとは違う所から入ってった。」

「この世界にはね、大体専用の入口があるんだよ!ほとんどは貴族以上からしか使えないけどね!」


貴族か........大きな何かを成し遂げればなれるのだろうか。別に富や名声が欲しい訳では無いが、前の世界では絶対に体験できないことだ。


「私貴族になって、お姫様とお友達になる!」


まだお友達になりたいのか........頑張れ。


「おっ、僕らの番だね。」

「見て驚かないでね!凄いから!」


「ちょっと待ったァァ!」


ん?なんだ?僕達に話しかけてるのか?........自意識過剰か。


「うるさいやつはどの世界にも、いるんだね。」

「私うるさい人嫌い!特に大きな声出して、ワーワー言ってる人!」

「ボクも!のんびりしてる時はすごい嫌だ。静かにして欲しい!」


そうかみんなうるさいヤツ嫌い組か。僕達の番なので歩みを進める。


「おい!そこの変な服着たふたりと、謎の生物のお前らだよ!」


周りを見渡す変な服を着たふたりか........いない。変な生物も........いない。僕達か?


「もしかして、僕達のことですか?」

「あったぼうよ。お前らさんは何しにここへ来た?答えない場合は牢獄へ行く可能性もある。」


はわ?僕達が何かしたのか?この世界で破ってはいけない禁忌でも犯したのか?


「僕達は、冒険者ギルドに用があってきたんです。冒険者になるために必要な手続きが主な目的ですかね。他には、買い物や、観光もありますね。」


まぁこんなもんだろう。嘘はついてないし、大丈夫だろう。


「なるほど、身分を証明できるものはあるか?お前らさんの格好からすると、異世界人の可能性があるからな。」


嘘だろ........異世界人だとまずいことでもあるのだろうか。どうすれば........正直に言おう。


「身分を証明できるものは持ってないですね。貴方の予想通り、異世界人です。」


捕まったりしないだろうな?


「そうか........ならいいんだ。俺が気になったのはお前ら二人じゃなく、この見たこともねぇ生き物なんだがよ、それはなんだ?」


正直にドラゴンと言うべきか?........いや、ここは隠しておこう。


「僕達が旅の........」

「ボクね!ドラゴンなの!」


言ってしまった。昔はドラゴンがいても大丈夫だったのだろうが、今はどうか分からない。


「ド........ドラゴンだと?お前らはこの国を潰しに来たのか?」


僕はかなり焦った。このままでは捕まってしまう。


「そんなことは無いですよ!よく見てください!この愛らしい顔!このキュートな羽根!ドラゴンなわけないじゃないですか!」


誤魔化せたか?おやっさんは厳つい顔をしわくちゃにしながら考えている。


「ドラゴンってのはよ、変身できんだろ?古の文献に載ってたぜ。」


古の文献だって?ドラゴンはどれくらい前の生物なんだ?それより今はこの状況だ。何とか打破しなければ。


「私が保証する!サラは悪いドラゴンじゃないよ!」


ドラゴンと言ったらダメなんだよ。もうカバー出来ない。


「ちょっとお前ら着いてこい。取り調べをするからな。そのドラゴンを暴れさせたらお前ら諸共騎士が処刑するからな。」

「分かりました。」

「ヤダ!私観光したい!お買い物するの!」

「ボクが前来た時は、通してくれたのになぁ........」


なんでこんなになるんだ。やっと地上に出たっていうのに。僕は落胆しながらも、この状況の解決をするために考え続けた。

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