第10話

「ねぇ、戻ってきたはいいけどさ、これからどうすんの?」

「とりあえず、ボタンの所まで行こっか!」


そう言ってジグザグの道を戻る。案外一本道だから迷わんだろう。


「ねぇ!出口見えたよ!」


やっとか。行きはそんなでもなかったが、帰りは長く感じた。気持ちの問題か。


「でさ、あのホネホネボーンのとこに戻るの?それとも出口探すの?」

「んとね、一応、ホネホネボーンのとこは出れるけど、ボクの背中乗ってかないとだよ?高いとこ大丈夫?」


うぅ........高所恐怖症だからな........。まぁ異世界だし、なんとかなるだろう。


「そっちのほうがはやいんだよね?」

「うん!真上に飛んでくだけだから!」

「私空飛ぶの?やった!ふふふ」


めるすっごく喜んでる。ずっと電脳世界に居たからいろんなものが新鮮なんだろう。


「じゃ、戻ろうか!ボク道覚えてるから、案内するね!」


よかった。案内してくれるってよ。ありがたや。僕達は引き返した。帰る途中何度か崩れたとこもあったが、なんとか戻ってこれた。


「ふぁぁ〜やっと着いたわ」

「これから飛ぶんだよね!うきうき止まらないよ!」


めるは少しの疲労感も見せない。多少は疲れてもよかろうに。ステータス........ここで見たい。いや、地上に出るまで見ないと決めたんだ。我慢我慢。


「じゃ、ボクは元の姿に戻るね!潰しちゃうかもだから離れててね!」


そう言うとサラはぴょこんとめるの肩から降り、上を見上げた。だんだんと大きくなってくる。鱗が生え、出会った頃の姿になってくる。今見ても、やっぱ凄い。身体中にびっしりと敷き詰められた鱗は黒く光り、とても硬そうだ。頭には角が生え、眼に強い力が宿っている。サラの龍モードを一言で表したら、闇竜シャム〇が四足歩行に進化したみたいだ。


「早く飛びたいな!」


めるはワクワクで止まってられないみたいだ。ずっと揺れてる。


「準備オッケー!さぁ乗って!」


サラは翼をこちらへ降ろす。ここから登って背中へ行けばいいのか。


「める、滑って落ちないでよ?」

「うん!」


じゃ、乗ろっかな。よっ、あれ?全然滑らない。凄いテカッテカしてるのに。これなら滑らないで行けるな。


「める、全然滑らないよ........ってもうそこ!?」

「じゃんぷしたら行けたよ!早く来てね!」


めると僕のステータスには大きな差がありそうだ。まぁ初期だし、これから成長するはずだよ。たぶん。


「待ってよ、今行くからさ。」


鱗の隙間に手、足を掛けながら登る。これ前の世界だったら登れてないな。さすが異世界。やっほーい。

もうそろそろか、ジャンプして一気に登ろう。よっ。


「はぁ、やっと登れた〜」

「みんな乗ったね!じゃぁ行くよ!」


いや、早すぎだ、少し休ませてほしい。あんま疲れてないが。


「空の旅!私空を飛ぶんだね!」


まぁ洞窟内のあいだは、空とは言い難い。


「おっけー」


僕が合図を出した瞬間、サラは大きく1歩踏み込み、大きな翼を上から下へ降ろした。下にあったホネホネボーン達はどっかへ吹っ飛ぶ。あの中に人の骨もあるのか。ごめんなさい。って........凄いふわふわした感じがする。


「わぁ!すごい!」


もう飛んでる。あの1回の羽ばたきでこんなに飛べるのか。何故か知らないけど、あんまり怖くない。恐怖耐性とかアビリティにそういうのもあるのか?後で確認しよう。


「ここの洞窟はそこまで深くないから、後1分くらいで出られるよ!」


でも、だいぶ高いな。よく生きてられたな、僕達。だんだんと昇っていく。風が心地いい。寝ちゃいそうだ。海っぱたを車の窓を開けて走るのと似た感覚だ。懐かしい。


「あっ!明るくなってきた!」


今までは暗かった穴から光が差し込んでくる。もうそろそろか?


「あとちょっとだね!5、4、3、2、1!」


サラのカウントが終わって急に明るくなった。なんでだ。まぁ異世界だからってことで済ましとくか。ゆっくりと周りを見渡した。そこに広がっていたのは、地球ではありえないであろう景色だった。

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