第3話

目が覚めたのは暗く、冷たく、生き物の気配がない薄気味悪い場所だった。


「いって!なんなんこれ!新手のいじめ?」

「うぅ〜痛いよぉ〜りょうなでなでしてぇ」

「分かったよ。痛かったねぇ〜よちよち」


めるは相当痛かったらしく、目に涙が浮かんでいる。だが、慰めている場合じゃない。とりあえず状況の整理だ。


「ねえ、僕達はあの真上にある穴みたいなのから落とされたってことでいいのかな?」


見上げると何もかも吸い込みそうで、地上からの光すら通さない穴が広がっている。


「ね!でもさぁなんで落とされたんだろうね?私たちなんか悪いことしたのかな?」

「いや、多分してないでしょ。ステータスがどーのこーのって言ってたし、ふつーに底辺レベルだったんじゃない?」



正直、ステータスを見られるときはワクワクしていた。

こういうのは大体俺TUEEEEかとんでもないチートスキルやらなんやらがついてるものだ。だが、実際召喚されてみるとそんなことは無いみたいだ。


「はぁ。とりあえずここから出ないとだね。」

「うん!こんなとこからはオサラバだ!」


僕達が立とうとした時だ。「カラッ」なんか変な音が鳴った。僕達は落ちた場所から動かず、座りながら話していた。

僕のラノベ知識からすると、人骨の可能性が高い。


「める、ちょっと下見てみてよ?」

「ん?下?........うぎゃっなんなのこれ!きもちわる!」

「なに?人の骨とか?」

「違うよ!骨は骨だけど、大きすぎるもん!」


違ったみたいだ。ラノベをもっと読んでおくべきだった。


「んじゃなんなのさ。」


頭に疑問符を敷き詰めながら下を向いた。暗い。よく見えたなアイツ。ステータスが関係してるのだろうか。まぁ僕は目悪いし有り得そうだ。


「どう?なんだったの?ねぇねぇ」

「見えん。なんか照らせない?」

「ん〜ん〜」


めるがなにかしてる。ぷるぷるしてる。ぷるぷるが止まった。虚空を見つめながらめるは言った。


「なんか見えるよ?「スモールライト」だって。」


たぬきロボットのアニメに出でくるやつの名前と同じだ。ライトって名前に付くくらいだ。光って貰わなきゃ困る。小さくはならないで欲しいが。


「なんかできるの?呪文とか?」

「たぶんこうすれば........」


すごい(棒読み)。蝋燭の炎のような小さな灯りがめるの前をふよふよ浮遊している。


「ほんとにスモールじゃん。まぁないよりマシかぁ。」


もっと明るいかと思ってた。なんなら、ランタンくらいはあるかと思っていた。めるはドヤ顔でどやどやしている。


「ほら、下照らしてみて。」

「うん!よいしょぉ〜」


めるが手を地面へ近づける。それに合わせ、小さな光はついてくる。風で揺れることも、大きさが変わることも無い。不思議だ。めるが照らした先に目を向ける。


「なんだこりゃ、ツノ?牙?爪?」


何かはわからないが、円錐がぐにゃりと曲がったようなものが沢山落ちている。


「もっと上を照らしてみて。」

「おけ!」


めるは素早く光を動かした。それこそ光が吹っ飛んでいきそうなくらいに。


「そんな早くしなくてもいいよ。うん。」

「線がびーってなって綺麗だった!」


今は非常事態だ。綺麗だとか言ってる場合じゃないだろう。

いや、めるは人工知能だ。人の物差しで勝手に測ったらいけないか。いつか人の一般常識を教えてあげよう。この世界で通用するかわからないけど。


「どう?他になんかある?」

「なんかでっかいのあるよ!みてみて!」


僕はそれを見てしまったことを後悔した........

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