幸福になるための宝石を求めて旅する少年と、ある少女の邂逅。陰鬱で救いのない物語が紡がれ、閉じてゆきます。
雰囲気を醸し出す文章は読みやすく、淡々とした語り口は少年の絶望を際立たせます。おもしろかったです。なんとなくモノクロの世界をイメージして読んでいました。硝子や花だけ色のついて見える世界です。
「昇華」が足りないような気がしました。作者の感じていることや思いをテーマにしたり作品に投影したりするのは当然のことなのですが、そこで「物語」として再構成されないと世界が不完全になり、綻びができて破綻してしまいます。逆に「物語」として再構成して完成させると、そこから逆に自分の世界の綻びが直ることもあります。物語は作者であり、作者ではないのです。