第11話
少年が路地裏でゴミ箱から見つけ出したご飯を食べようとすると、以前出会った家のないボロボロのおじさんに出会った。立ち上がってこちらに接近してくるおじさんを見て少年はぎょっとした。襲われるかもしれないとナイフに手を添えて身構える。
おじさんは少年の前に立つと少年をまっすぐ見つめた。
「君は以前に比べて和やかな表情をしている。そう、きっと幸せなことがあったのだろう。私にもかつて隣人を愛し、己を愛した日があった。今は死が私を迎えに来るのを待ち続けている。私はこれほどに死を待ち侘びているのに、一向に死ぬことができない。先日、君と出会った日。あの日の私は終始意識が途絶えて、目を開けても閉じても視界が白く、全身の痛みから不思議と解放されて私はこのまま死ぬのだろうと思った。だが、私の腹に何かが落ちてきてちょうど腹部の傷口に当たり、全身に激痛が走った。私は意識を取り戻してしまったのだ!しばらくして布団をめくり、君が私の顔を覗き込んだ。君は野獣のように無骨で怯えた表情をしていた。私は死神を待っていたのだ。君のような餓鬼がまさか、私を見つけるなんて。ああ、死ねなかったのだよ。君のせいで。君の幸福、君の望みはきっと叶うだろう。私を"生かす"ほどの力があるのだから」
おじさんは大声で笑った。何度も何度も、膝から崩れ落ちるほど笑い転げた。あまりに大声で叫ぶような声で笑うため、最後は咳込み、血を吐いた。血を見るとおじさんはまたげたげたと笑った。少年は恐ろしくなり遁走した。少年が消えたのち、おじさんは立ち上がり遠くを見つめて呟いた。しかし、君のおかげで最期の望みであった娘の成長した姿を見ることができたのだがね、と。
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