第6話
少年は少女と会う週末までの間、この町に他に硝子の破片がないか探して回っていた。市場のはずれ、小学校の周辺の住宅街、治安の悪い酒場の通り、公園、病院、とにかくあらゆるところを歩いた。少年が探す硝子の破片は、いろんな形で少年の目の前に現れた。ある町では、何気なく散歩していたときに出会った。前から歩いてきた白髪の紳士が自らのポケットからハンカチを取り出す際、キーチャームを落としてしまった。少年の足元にそれは落ちたが、紳士は落としたことに気が付かず人混みへ消えた。少年がキーチャームを拾うと、橙色の硝子が球体状に加工されてぶら下がっていた。こうして偶然、少年の手中に収まった。また、あるときは、ホームレスのおじさんに自分の旅の話を聞かせたところ、似たような《宝石》が銅像に埋め込まれていると教えられ、教会の前の大広場の立派な銅像に確かに少年が探す硝子の破片があった。銅像は2メートル近くあり、教会の前で人通りも多く、破壊して奪取するには到底無理があった。数日間、町に滞在し、諦めようと思ったその晩に大地震が起き、銅像は地震によって砕かれて、地面に散った。少年は瓦礫の中から硝子の破片を見つけ出した。少年は何か特別な力があるのではないかと感じていた。家族と故郷を失い、母親からネックレスを託されたとき、少年にはこれから進むべき方角が分かった。何かに呼ばれるようにして、寝食を忘れて体の行きたい方へ足を進めた。故郷から数百里離れた山奥の湖の底に、それは落ちていた。湖底で眠る硝子の破片は、少年と目があったとき喜ぶように光りを放った。水草が少年の体を避けるように、道を作った。そして優しく拾い上げて陸に戻ると、再び少年はどこからか体が呼ばれるような感覚に襲われた。この繰り返しで少年は今日まで旅を続けていた。特別な力がどんなものかは少年は興味がない。とにかく橙色の硝子の破片を集められればそれでよい。少年はそう思っていた。
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