第14話 柊 鏡花
「
突然、彼女が俺に話しかけてきた。
「…はい。」
俺が返事をすると彼女はゆっくりとこちらを向いた。
「私って…暗いですよね。」
「…え?」
彼女の言葉を聞いた瞬間、俺は気の抜けた返事をしてしまった。
何故なら彼女は唐突、自分が暗いと言い始めたのだ。
「私って本当は暗い人間なんです。」
「…どういう事?」
俺は聞き返した
それから彼女はぽつりぽつりと話し始めた。
「私は学校では天才だと言われていますが、実は友達がいなくて勉強くらいしか出来なかったんです。それでも頑張って友達を作ろうとして、やっと一人できたと思ったら裏切られて、また勉強にのめり込んで、いつの間にか学校の順位や全国順位が1位になっていて、そうしたら今度は皆が集まってきて、でも友達がいないことは変わらなくて、そのことを理解したときに、人を信じれなくなってしまったんです。」
彼女は今までのことを淡々と話した、
その彼女の目には涙が浮かんでいた。
彼女の話を聞いた俺は、黙って彼女の背中に手を置き、
静かに抱き寄せた。
「え…ど、どう…しましたか?」
彼女は慌てて離れようとしたが俺は彼女の頭を撫でて言った。
「辛かったんだね、でもこれからは俺を頼って欲しい。
だから無理をしないで。」
彼女は俺の話を聞くと俺の背中に腕を回し、
そのまましばらくの間、抱き締めた。
トクン…トクン…
俺に彼女の体温と心臓の鼓動が伝わり、
しばらくの間、静かな時間が流れた。
彼女が俺から離れ、顔を近づけてきた。
「あっ、あの…」
彼女が俺に何か言おうとした瞬間…
―――キーンコーンカーンコーン
それを遮るようにチャイムが鳴った。
「も、もうすぐ授業が始まるから…戻りましょっ!」
彼女は顔を真っ赤にして急いで立ち上がった。
「そ、そうだね!戻ろうか!」
俺も急いで立ち上がり二人はその場を後にした。
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