第5話 いつも通りの朝

ピピピ…ピピピ…

静かな部屋に目覚まし時計の機械的な音が響く

俺は目を覚まし、ゆっくりと体を起こす。目覚まし時計を止めて時間を確認する。

(6時か…いつもと同じだな。)

俺はベットから起き、クローゼットから制服を取り出し着替える。

鞄を持ち部屋から出て一階に降りリビングに入る。

中也ちゅうや君、おはよう。」

エプロン姿の春美はるみさんが笑顔で優しく言った。

「おはようございます。」

俺も挨拶を返し、朝食が並べてあるテーブルに着く。

「いただきます。」

俺はそれだけ言って朝食を食べる。

しばらくしてリビングのドアが開き一人の少女が入ってきた。

その少女はショートボブで、すらっとした体型でいかにもって感じの人だ。

彼女は、赤月あかつき 弥生やよい 春美はるみさんの実の子で如月きさらぎの妹である。

「おはよう。弥生やよい

春美はるみさんは弥生やよいに優しい声で挨拶した。

「…………ッチ」

弥生やよいは舌打ちだけしてテーブルに着く。

「こら、弥生やよい。何なのその態度。」

春美はるみさんが弥生やよいに注意するが、弥生やよいは無視して無言で朝食を取り始める。

「ごちそうさまでした。」

俺は一足早く朝食を食べ終わり、皿を片付ける。

「行ってきます。」

俺は皿を片付けた後、すぐ家を出た。

家を出て、しばらく歩くと後ろから、

「おーい、中也ちゅうや

聞きなれた声が聞こえる。

振り返ると、金髪の背の高い男が手を振りながら走ってくる。

「やっと、追いついた。」

彼は息を切らしながら俺に追いついた。

「なんだ、勇吾ゆうごか。」

彼は羽童うどう 勇吾ゆうご 俺の親友でバイト仲間、家も近く小学校からの付き合いだ。

彼はなのだが、これは母親がイギリス人とフランス人のハーフでらしい。

「お前、何でちょっと早いんだよ。」

勇吾ゆうごが疲れたように言った。

「仕方ないだろ、弥生やよい春美はるみさんと

喧嘩しててめんどかったから早く出たんだよ。」

俺は、朝の出来事を勇吾ゆうごに話した。

「やっぱつらいよな反抗期って、

うちの妹も反抗期で当たりが強いんだよ。」

勇吾ゆうごは困ったように言った。

俺は、驚いた。

「え、あのさくらちゃんが反抗期?ありえんな。」

俺は勇吾ゆうごの妹と同じ図書委員会で同じ日に当番なのだが、

とても良い子でとても反抗期だとは思えない。

「まぁな、あいつはなぜかお前に対しては優しいからな。」

勇吾ゆうごはため息交じりに言った。

「はぁ」

俺は気の抜けた声を出しながら、鏡花きょうかのことについて考えた。

「まぁそんなことより……」

勇吾ゆうごと俺はいつも通り他愛もない話をしながら、学校に向かうのだった。

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