第3話『力の開放。冷気の力』いつの間に俺がリーダーになったんだ?!

「、、、神だけど、続き話していいかのぅ?」


皆で神の方に目を向けると、神は遠くから凄く細い目でこちらを見守っていた。

自分を中心に何度も会話しようとしたが、横取りされるわ、話が盛り上がっていくわで置き去り状態。話したいこと大体話されるし、もう勝手にしてくれといった感じだった。


「あ、どうぞ続きを話してください」

「どうぞ」

「どうぞどうぞ」

「しゃべっていいかしら?」

「お前じゃねぇ黙ってろ」

「おぬし達、ほぼ初対面なはずじゃよなぁ。それとも何処かで打ち合わせとかしとったんかのぅ」

「いいえ、ツッコみどころが多すぎるんです、この人たち」

「私は普通だと思います」

「爆発とか普通じゃないです」

「わたしは普通の全裸だわ」

「露出狂は普通じゃねぇわ」

「オレはーーー」

「お前だけは普通とは言わさないからな!」

「やけにツッコむわね、このロリコンは」

「ロリコンは鳥だろ!俺は雪政ゆきまさって名前だ覚えとけ!」



神はやれやれといったふうに話す。


「わかった。話をする前にその格好を何とかしよう。気になってしょうがないようじゃからのぅ」


格好を何とかしてくれる?あの光でってことなのかな?

それは助かるが、早めにして欲しかったな、俺も元の世界で降ってた雪が溶けてきてて寒かったし。


ーーーと、いうより気になってしょうがないとか、神は気にならないということなんだろうか、それだと神の正気も疑うんだが。


「何とかできるんですか?」

「レヴァラムゲートのプレイデータからキャラクターコーディネートを選択するといい。わしの力でその服装を今のおぬし達に投影し立体化しよう。もっともゲームであった装備の補助効果は付けれんがの。」


俺はスマートフォンの電源ボタンを押した。すると光り、起動したままのレヴァラムゲートの画面が現れた。スマートフォンは使えるのか?電波はないようだが、通信を伴わないアプリなどの機能や、一部のレヴァラムゲートの操作ができるようだ。


俺はレヴァラムゲートのコーディネートを開き、いつもの最強装備を選択した。もっとも始めて1ヶ月の最強など、たかが知れているが。装備を選択すると着ていた作業着は消え重厚な鎧が俺の身体を一瞬でまとった。


「おおっ、って、重っ!」


鉄装備で全身ガチガチに固めた装備だ、そりゃ重い。やはり、現実はゲームみたいに着こんで動けるもんじゃないんだな。


「それでよいかのぅ?」

「あ、いや、まだ」


このまま行動するのもキツいし、軽装にしよう。

タートルネックにタクティカルベストを羽織り、黒をメインカラーにしたスワットが着ているような服装。、、、うん、これでいこう、俺にはあってる。あと、この世界では俺の目はメガネ無しでもよく見えるみたいだけど、ないと落ち着かないから付けておこう。


他の三人も終わったようだ。そりゃそうだが見違えた。


全裸だった金髪幼女はマゼンタ色のワンピースに重厚なブーツを履いた格好。歩くたびにカシャカシャと鋼鉄の足音がする。二の腕から手まで何も付けておらず、動きやすそうなスタイルをしている。


アフロの女の子はオレンジ色の長い髪を後頭部で結び、白のブラウスに黒のミニスカートとニーハイソックス。アフロでよくわからなかったが見た目はまあまあ可愛く女子女子している。


そして着ぐるみを脱いだ鳥の人は俺と同じ年齢くらいの顔つきだった。ブラウン色の髪を逆立たせ、オリーブのジャケット、ネイビーのインナー、ブラックカーゴのミリタリー服だ。動きやすく利便性があるってところは発想は俺と同じかもしれない。


「若かったんだな。先生っていうからてっきり結構な年なのかと」

「作家をしていてね。まあ、先生なんて言ってくるのはそこの女子ぐらいだ」


そう言ってアフロだったオレンジ色の髪の子を目で促す。


「先生!ついに正体を現しましたね!」

「彼女は少しイタい子でね」

「鳥だったあんたが言うか、、、」



これでもう話の邪魔をするものはない、と確信した神は再び話を再開させる。


「さて、仕切り直して話をしよう。召喚の話をしたのう、わしが呼んだのはおぬし達だけじゃが、召喚を行える神はわしだけではない。ここ以外に住まう神々も、わし同様、異世界の人間を召喚しているはずじゃ。」

「俺達の他にもこの世界にきた人達がいるってことですか?」

「まあ、あの時プレイしてたのはオレ達だけではないだろうし、オレ達を呼んだのが救済ならば、邪神の討伐を目的とした召喚も前から行っていたんじゃないかとは思った」

「うむ、邪神が現れたのは数年前になる、そこからレヴァラムゲートを配信し、その中で優れた能力を持つ者をこちらに呼ぶというのを何度か行っておる。わしが召喚しただけで6度目になるのう」

「へぇ、そんなに」


幼女は不敵に笑う。


「だけど神様、ここがレヴァラムと同じ世界であるなら、魔物なんかもいるはず、俺達の力で、どうやって戦うって言うんですか」


ここで、その言葉を待っていたと言わんばかりの力強さで神は切り返す。


「そこでじゃ、おぬし達に渡すものは2つある。渡すというよりこれは力の解放といったところじゃがのう、、、。それは、個人で得たスキルと属性じゃ」

「個人で得たスキル?」

「そう、レヴァラムゲートのゲームで覚えた特技などじゃ、その経験値はそのままおぬし達に付与される。これが異世界召喚の要であり剣じゃ」

「そんなことができるんですか?」

「属性とはなんだ?属性ならゲーム時に複数使っていたが更に別のということか?」

「この世界で持てる基本属性は一人1つに限定されるのじゃ、よって今までの複数の属性能力は持てぬ、、、。そして、付与される属性とはおぬし達がこの世界に来る時に一番近くにあったエレメントとなる。」


幼女が言うところの、それがこの世界にいる者にはない異世界人が持つ力ということなんだなと。


「そうか、経験値か、、、」

「力の解放が不安かのぅ?」

「え?」


神は少し気落ちしている俺を見て言う。


「あ、いや、、、俺はレベルが低いから、レヴァラムでの経験値なんか解放したところで戦力にならないなって、、、」

「ならオレ達がお前を支えればいいだけだろ」

「、、、え?俺に協力してくれるっていうのか?」

「こうなっては運命共同体じゃないか。支援する」

「私も先生ほど強くないですが、お手伝いします」

「わたしもいいわよ」

「お、お前たち、、、何か、その、、、ありがとな」


最初は何か変な奴等だなって思ったけど、弱い俺のためのこんなあっさり力になるって言ってくれるなんて。本当は心の暖かい人達なのかもな、、、。


そういえば俺は最近、仕事以外で人と話すことはなくなっていた。こんなに感情を高ぶらせて話すのも久しぶりだ。


異世界に召喚されるという事態を受けて俺は今までの生活になかった楽しさをここに見いだしているのかもしれない。実は俺の方が現状に興奮しているんじゃないだろうか、そんな気さえする。今はあるがままを受け入れよう、考えるのはその後だ。


「よいかな?では始めよう。レヴァラムゲートを開いたまま、胸に当てよ。」


力の解放の儀式が始まる。神の指示を聞き俺達はレヴァラムゲートを開きスマートフォンを身体に当てた。幼女だけは頭に当てた。ああ、だがこいつはいうことを聞かない子だな、ということがわかった。「別にそこでもかまわん、、、」神も幼女に正確な指示を出すのをあきらめたようだ。


そして神が詠唱を行うと杖が再び光出した。光は四つの球に別れ、残像を残しながら俺達にまっすぐ向かってきてスマートフォンに直撃すると、プログラムのような文章が空中に浮かび上がり、俺達の周りを廻り出すそして俺達の中に入ってきた。ほのかな暖かみと共に身体が満たされていく感覚を得る。


情報が身に付いていく。力が上がる、頭がすっきりしてくる、レヴァラムゲートで使っていたスキルの使い方が、、、、わかる。


文章は最後に一文残り、それは俺の前で形を作り、剣となった。


「これは?」

「それがおぬし達の属性の核じゃ、触れるがよい」


剣に触れる。剣は冷たかった。剣を中心にキラキラと輝く氷の粒が浮かんでいる。


「ふむ、おぬしの属性は、、、『冷気』じゃな。」

「冷気、、、」


そうか、あの時、吹雪の中にいたからか。冷気が俺の最も近くにあったエレメント、なるほどな。


剣は触れた手から身体の中に浸透していく。そして俺の身体から氷の粒が放出された。汗のように無意識で発散されるが止めようと思えば止めれる。なんとも不思議な感覚だ。


「これが属性を持つってことか」


他の奴等は?


金髪幼女は水を操っていた。螺旋状の水流が幼女の周りを上向きに廻っている。こいつの属性は『水』だな、たしか入浴中だっていってたし。「なにこれ、勝手に動いてるわ」「操ってるんじゃないんかい」


「爆発じゃない、、、だと、、、」東雲色の女の子の手の平からは『火』が出ていた。料理作ってたからか?「爆発が良かったのか、何、爆発させる気だったんだよ」


そして鳥の人は身体から電流のようなものを発している。電気か。「ふっ、まさかコンセントで遊んでいただけで『雷』属性とはな」「いや、危ねぇことしてんじゃねぇよ!」やはり、着ぐるみだけは謎だった、、、。


「これが、異世界に住む者達が得られる力。スキルを自由に構成できる能力と、体内から放出できる自然エネルギー、この二つは我々にはなく、そこには無限の可能性がある」

「確かにこの力は凄い、異世界人に期待するのもわかる」

「うむ、そして今一度頼む異世界の者達よ!皆で手を組み、どうかあの邪神を倒してくれぃ!」

「神様、、、。そうだな、、、。どっちみち今はそれを目標にやるしかないよな。な、みんな!」

「そうだな、リーダー」

「ですね、リーダー」

「仕方ないわね、リーダー」


「おい!いつの間に俺がリーダーになったんだ?!」


「こういうのは仕切りだしたやつがやるもんだ」

「満場一致です」

「えぇぇ、まあ、、、いいけどさ」

「ふふっ、頼もしいのう。ではリーダーよ、おぬしのレヴァラムゲートでのプレイヤーネームはなんじゃ?」

「え?フェブライ、、、」

「フェブライよ、おぬしのパーティに祝福あれじゃ!」


杖の先から美しい輝きの玉が空へと放たれた。光の玉は空中で弾けると粒となり、キラキラと俺達に降り注ぐ。金色の輝きが俺達を祝福してくれた。


和やかな雰囲気の中、決意を新たに俺達は邪神を倒すためにパーティを組む。ちょっとおかしな奴等で不安もあるけど打倒邪神として頑張っていこうーーーーー。




ーーーーーその時だった。




「で、もうしゃべってもいいかしら?」


幼女が口を開いた。


「え?お前しゃべってたじゃん?」

「いいんだよ」

「Grazie《グラッチェ》」

「イタリアの幼女かな?」


幼女は神の方を向いて歩きながらしゃべりはじめた。


「他のプレイヤーもどこかにいるとしてぇ、みんなと同様にスキルと属性だけもらうんじゃ、少し物足りないかしら。

ーーーーもう少し色をつけてもらわないと」

「しかし、わしが今おぬし達に与えられるものはもう、他に何が望みなんじゃ、、、?」


幼女は「ふふっ」と笑い、目を閉じると。一呼吸あけて、カッと目を開き言う。




「お前の命だ」

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