▶︎▶︎ ▶︎03_b.証明

 翌日出勤したけれど、有奈華ありなかさんは始発の営業所から乗って来なかった。

 けど、動揺などせずに勤務できたと思う。

 昨日ぼくは有奈華ありなかさんに遊ばれているだけだって、心の中で整理できたから。


 けれど大学発の最終バスに勅使河原てしがわらさんが乗ってきて、駅で降車しなかったのはちょっと意外だった。

 他のお客様が皆駅で降りた後も、車掌台の横の席に自分の背丈よりも大きいコントラバスを入れた楽器ケースと共に座り続けていた。

「降りられませんか? 終点は、バスの営業所があるだけですけど」

「で、ですよねですよね……」

 眼鏡の奥で瞳が不安そうに揺れ、楽器ケースをぎゅっと抱きしめる。

「降りますか?」

「あ、あのっ! と、友達の家がこのバスの終点近くなので、そこまで行きたいなって……」

「それって、有奈華ありなかさんのことですか」

「あ、そうですそうです! 犬吠埼さんは、やっぱり六音ろくねちゃんと仲良しなんですね」

「仲良しかどうかは……扉閉めますね」

 外から扉を閉めてロータリーの外へ。

 街灯に照らされた道路に出て二台程乗用車をやり過ごした後バスを誘導すると、再び車内へと戻る。


 出発の合図をすると、おんぼろはと低く唸り、上り坂をのろのろと登ってゆく。

「あ、あの私勅使河原てしがわら波瑠はるって言います! さ、さっきは慣れ慣れしくお名前呼んでしまってすみません……六音ろくねちゃんからお名前聞いていたから、つい……」

 勅使河原てしがわらさんは恥じ入ったような顔でうつむき、目だけこちらに向けてくる。

「構いませんよ。勅使河原てしがわらさん、有奈華ありなかさんの家の場所はお分かりですか?」

「だ、大丈夫です! なんか、道路に出て待っていてくれるって。」

 ああ、山道の前で待ち合わせているのか。

 道路からそんなに遠くないところに家があるとはいえ、流石さすがに案内無しで夜の山道歩かせるわけにもいかないだろうし。

「終点の営業所手前の前で停めますね。多分、有奈華ありなかさんもそこで待っていると思いますので」

「えっ、手前で止めるとか、そんな事できるんですか?」

「できますよ。田舎の路線なので色々融通効かせているんです」

「しゃ、車掌さんってそんな事ができるんですね!」

「あまり大きな声では言えないですけれど」

「アッ、アルバイトさんなのに、すごいです!」

「あ、ぼく正社員なんです、学生っぽい見た目ですみません」

「えっ、し、失礼しました! すみません学生服来てらっしゃるし、若そうだからなんか勘違いしてしまって‼︎」

 勅使河原てしがわらさんは焦ってわたわたと片手を振る。

 なんかハムスターみたいだな。

 ってかこの人胸大きいな!

 手の動きに合わせてぶるんぶるん揺れているんですけど。

 ぼくは立っているので見下ろす形になり、カーディガンの下のシャツが大きさ合っていないのか明らかにボタンとボタンの間に隙間ができていてその奥が……

「あの、気にしないでください、よく学生に間違われるんで……」


 駄目だ集中。

 進行方向左カーブ対向車無し後方も車無し。

 この時間帯は終バスだから先輩のバスとすれ違うこともないし道は川沿いだから車や自転車の飛び出しなどの可能性も基本は無いけれど、路面を意識的に見るようにする。

 勅使河原てしがわらさんも目を瞑って、大人しく座っていた。


 程なくして街灯に照らされた有奈華ありなかさんが進行方向右側に見えてくる。

 スカさんはゆっくりとご老体を減速させ、丁度有奈華ありなかさんの立っている場所が車体後方くらいになるように停車させた。

「着きましたよ」

 車掌鞄の中に切符切りのはさみ仕舞しまい、扉を開ける。

「あ、ありがとうございます!」

 勅使河原てしがわらさんは目を開け、あせあせしながら立ち上がり、楽器ケースを抱えて扉に歩いてゆく。

 そして、階段の前でふと足を止めた。


「どうしました?」

 ちょっと迷った顔をしてから、きゅっとぼくの目を見てくる。

「あっ、あの、声、風でも引いたんですか?」

「あー……これですか。すみません、ちょっとお聞き苦しいところあるかもしれません。申し訳ありません」

「いっ、いえいえ、お大事にしてください。それとっ」

 勅使河原てしがわらさんは今まで見た中で一番良い笑顔をして。

「犬吠埼さんは、六音ろくねちゃんが言った通りの方だったんですね!」

 そう、口にした。

 何のことかわからず曖昧な笑みを浮かべる。


「こんばんわぁ」

 外から声がする。

 有奈華ありなかさんが道を渡って、入り口の所に来ていた。

「こんばんわ」

 返事を返す。

 有奈華ありなかさんと交わした賭けの約束が、頭を掠める。


 ぼくが音楽が好きだということの証明。

 証明されれば、ぼくは有奈華ありなかさんの歌のレッスンを受ける。

 されなければ、有奈華ありなかさんは二度とぼくに歌えと言わない。

 期限は、今週末まで。


 勅使河原てしがわらさんが楽器を下ろす手伝いを有奈華ありなかさんはして、そのまま山道へと消えていった。

 首には辛子色のハンカチが巻かれていて。

 それを気にしている自分が少し嫌だった。


                  ▶︎▶︎


 翌日は有奈華ありなかさんと勅使河原てしがわらさんは始発のバスには乗って来なかった。

 停留所で待っていた非番の先輩達が、悪態をついて寮へと戻ってゆく。

 午後も少なくともぼくが乗るバスには乗車しなかった。

 先輩たちに乗ったかどうか確認もできたけど、結局そうしなかった。

 入り口横の車掌台の隣の座席にはいろんな人が座ってくる。

 勅使河原てしがわらさんはぼくの隣に座ったり、座らなかったりした。

 有奈華ありなかさんが何か企んでそうな気がしたけれど、気にするのは止めた。

 バスの勤務があるぼくに、やれることはない。

 この調子で三月以前のぼくの日常が戻ってくる気がしていた。


                  ▶︎▶︎


 土曜日。

 寮の玄関に届けられた朝刊を拾い、奥多摩版の紙面を見る。

 降水確率は午前二十パーセント、午後十パーセントで晴れ。

 新聞を信用するわけじゃないけれど、昨日は夕焼けが綺麗きれいだったしつばめも高く飛んでいる。

 最近天候は安定していた。

 疑う理由もない。


 朝食を寮に届けた後、一緒に運んだ京子さんとグーを小さく合わせる。

 今日の京子スペシャルのおにぎりの中身はたい胡麻漬ごまづけと、桜の花の塩漬けと筍の春むすび。

 はあ、幸せ。

 一噛みごとに幸せが口の中に広がる。

 ここの所気分が浮かないけど、これを食べている時は別。

 ぼくが言うのも何だけど、京子さんはもう立派に独り立ちができるレベルだし、可愛らしい工夫とかされていて街で売っても人気が出るんじゃないかなと思う。


 事務所で車掌鞄を受け取る時に経理の黒川先輩から、今日は大学の部活棟で新入生歓迎会があると聞いた。

 いつもは大学から駅の便は午前中授業が終わった後の午後一あたりの便が混むけれど、今日は終バス間際まで人が多く乗るだろうとのこと。

 こうしたイベント事の時は思いがけないことが起こることが多い。

 朝靄あさもやの中、先輩達と一緒に黙々と出発の作業をする。

 スカさんは普段より時間を掛けてエンジンを見ていた。


 午前の勤務から、大学に向かう便には食材やら瓶ビールや炭酸の一リットル瓶のケースを持った学生さんが数名乗ってきた。

 通常の土曜日の勤務からすると、乗車する生徒さんは少し多め。

 皆さんいつもよりちょっと体温高めな感じで準備の話などしている。

 そんな中でもスカさんの女子生徒さん人気は絶大で、運転席の周りに相変わらずの人だかりが出来ていた。


 反対に大学から駅の便はいつもとあまり変わらなかった。

 すれ違う先輩のバスも、駅から来る便は時間が経つにつれちょっとずつ人数が増えている。

 学祭の時は増便するけど、新入生歓迎会はあくまで学生の自主的な催し。

 だから、増便などの対応はしない。

 黒川先輩の言っていた通り、夕方の便はいつもよりかなりの混雑するかもしれない。


                  ▶︎


 ぼくの午前の勤務の最終便、駅から営業所に向かう区間にお客さんが三人乗って来た。

「おはようございます、凍江こごえさん」

 今日も美しく巻いた髪を揺らす車掌の成瀬なるせ先輩。

 シミひとつないブラウスが上品な雰囲気を漂わせている。

 その後ろには営業所唯一の女性運転手の片倉かたくら先輩。

 すらりと長い足に先の広がったのジーンズを履いていて、上はTシャツ。

 ベリーショートの髪型も相まってラフな感じがかっこいい。

 片倉先輩はぴたっと成瀬先輩の後ろについて、ぺこりとぼくに頭を下げる。

 お二人に挨拶をすると、さらにその後ろに初老の背広姿の中肉中背の男性が続いた。

「おはよう、凍江こごえ君。元気にやっていますか」

「所長、おはようございます。本社ですか」

「うん、そうですね」

 松本所長はそう言って微笑むとバスの階段を登って車内へ入ってゆく。

 川野辺交通は第三セクター。

 月に一度は民間の方の出資先である親会社である東西交通本社へ報告などをしに行っていた。


 外から扉を閉めるとぼくは歩いてロータリーの外へ。

 道を渡る生徒さんや、自転車をやり過ごすと、バスをロータリーの外の車道まで誘導。

 それから車内へと乗り込む。


 成瀬先輩と片倉先輩は車掌台の隣の席に座わり、車体一番後ろの席に座る松本所長と会話をしていた。

「片倉君は街に家があるんでしたね」

 そう尋ねられて、片倉先輩は頭を縦に一つ大きく動かした。

 先輩も初めの頃は寮に入っていたけれど、しばらくして一人暮らしに切り替えたそうだ。

 物静かであまり人付き合いも得意ではなさそうだから、人間関係が濃密になりがちな寮の生活が肌に合わなかったのかもしれない。

「昨日は組合の話もあって、沙耶さやちゃんの家に泊めてもらっていたんです」

「そうですか。休日なのに、色々ご苦労様です」

「いえ、私たち自身の問題ですし……所長、お疲れのご様子ですね」

 所長に目を向けると眼鏡を取って目頭を指で揉んでいた。

 指を止めると、成瀬先輩に向けて笑顔を見せる。

「お恥ずかしい。皆さんが毎日立ち仕事をしているのに比べたら、大したことはないですよ。ただ座って人の話を聞いているだけですからね」

「難しい話ですか?」

「いや、ははは。どうでしょうね。ま、耳に心地良い話ではないことは確かですね。そうだ、はいこれお土産」

「わあ! 大きな紙袋お持ちになっていたの、気になっていたんです!」


 成瀬先輩は顔を輝かせて立ち上がり、すたすたと後部座席まで歩いてゆく。

 車体は揺れているけれど、吊り革を掴まずに綺麗な姿勢のまま。

 流石さすがは営業所一と言われる車掌の鏡。

長明寺ちょうみょうじです。折角せっかくなので向島むこうじままで足を伸ばして。お口に合うと良いですが」

「桜餅! 季節ですもの。皆喜びますわ!」

「数はあるので、遠慮なさらずに」

「ふふ、今日は良い一日になりそうです。所長さんは?」

「いえ、私は先に食べましたので、皆さんで」

 包みを一つ受け取ると、満面の笑みで片倉先輩の元に戻って来た。

 丁寧に包みを解くと成瀬先輩は一つつまみ、隣に座る片倉先輩に差し出した。

沙耶さやちゃん、やったね。凍江こごえさんもどうですか?」

「ありがとうございます。でも、後にしておきます」

「あら、遠慮なさらないでも良いのよ」

「勤務中ですし……」

「固いこと言わなくても良いのに。ねえ、所長」

「ええ、私達だけですし。問題ありませんよ」

「あの、横須賀先輩が食べられないので……」

 成瀬先輩が目を大きく見開いた後に、ふにゃっと表情を緩めた。


「横須賀さん、良い相方パートナーをお持ちになりましたね」

 片倉先輩が横でこくりとうなずく。

「丁度一年ですよね、私と沙耶さやちゃんの下について、お仕事覚えたの」

「あの時は散々ご迷惑おかけしました……」

「そうですね。初めての乗車研修の時、午前の便の最後の方になって急に下を向いてもじもじしていたから、どうなさったのって聞いたら顔を赤らめておしっこって……」

「か、揶揄からかわないで下さい!」

「ふふっ、ごめんなさい。意地悪でしたね」


「そうでした。凍江こごえ君がここに来てから、丁度一年ですね」

 所長が眼鏡の奥で目を細める。

 おじいちゃんに見られた孫みたいな気持ちになって、ちょっと恥ずかしい。

凍江こごえさんは立派です。私に付いて、一月ひとつきで独り立ちしましたもの。その間に業務や先輩たちの顔覚えて、はさみの癖直して、食事の準備や洗濯の雑用もして、ねえ?」

「いえ、成瀬先輩の教え方が上手だっただけですよ」

「そうですか、そうですか」

 松本所長は満足そうにうなずいた。

凍江こごえ君には感謝しています、本当に」

「いえ、感謝なんて。学校は推薦状すら書いてくれなかったですし、そんなぼくを拾ってくれた所長には感謝しか……」

「感謝しているんです。本当に」

 そう強く断言されて、ぼくはちょっと気圧される。

 所長の目は真剣そのもので、こんな目を見たのは面接の時以来な気がする。

 でもそれは長続きせず、ふっと表情を緩めてみせた。


「風が気持ちの良い季節です。少し窓を開けていただけませんか」

「わかりました。川側で良いですか」

「それでお願いします。ありがとう」

凍江こごえさん、私が開けましょうか?」

「成瀬先輩のお手を煩わせられないですよ。両手が桜餅で塞がっていますし」

「ふふっ。では後輩の活躍を見守らせて頂きますわ」


 後部座席まで移動して、川側の窓を少し上に開けて固定する。

 山陰に入るとまだ肌寒いけれど、それでも湿気をはらんんだ風が春を主張する。

 山桜はまだ所々咲いていて、萌え始めた緑に彩りを添えていた。

「寒くないですか」

「いいえ。とても気持ちの良い風です。暑くもなく、寒くもなく。一年で一番良い季節です」

「所長、最近毎日それおっしゃってませんか」

「成瀬君、毎日が幸せならそれに越したことはないです」

「ふふっ、それもそうですね。私もこの路線が好きです。車内でお菓子も頂けますし」

 鈴のように笑う声が窓からの風に乗って車内に広がる。

 ふと、袖をくいくいと引かれる感覚があったので横を見ると、片倉先輩と目が合う。

 黙って進行方向を指差したので見ると、上からトラックが降りて来ていた。

 しまった。成瀬先輩達の会話に気を取られていて安全確認を怠っていた。

「片倉先輩、ありがとうございます。すれ違い誘導して来ます」

「行ってらっしゃい、凍江こごえさん」


 成瀬先輩の声に送られて停車したバスから前に進み、停車したトラックの運転手に頭を下げる。

 道は真っ直ぐな場所だったので比較的すれ違いやすい。

 笛と旗でスカさんに全身の合図を送る。

 車内では成瀬先輩と所長がまだ何か話しているようだった。

 ガラス越しだし、はっきりとは見えない。

 けど、甘い餡子を食べた顔にしては、成瀬先輩の顔は真剣すぎる気がした。


                  ▶︎


 昼を食べて寮に戻る頃から、空に雲が出始める。

 休みを挟んだ夕方の勤務になっても、相変わらず学校に向かう生徒さんがちらほらといた。

 昼の勤務だった成瀬先輩によると、午前の授業が終わった後も生徒さんが相変わらず大学に向かっていたし、帰る生徒さんは多くはなかったそうだ。

 自転車で学校に向かう生徒さんもいるから、巻き込まないように注意。

 十八時台の便でも、酒瓶や乾き物の入った袋を抱えたお客さんが駅から乗ってくる。

 二十四時間出入り自由な部活棟があるから、泊まるつもりなのかもな。

 とはいえ限界もあるだろうから、終バスはかなり混雑するかもしれない。


 大学発十八時台の便に生徒さんが大挙して入ってくるようになる。

 お酒を飲まれた方も結構いて、車内の会話もいつもより賑やかだ。

 飲みすぎたのか、座席に前かがみに座って背中をさすられている方もいる。

 なるべく奥まで詰めて入ってもらい、満員の状態で走らせる。

 駅で降ろした後再び大学に戻るも、すれ違う先輩達のバスも軒並み同じような状態だった。

 人の熱気で、車内の温度が高くなる。

 駅から大学に向かう便は空いているので、幾つか窓を開けて空気が通うようにしておいたけれど、十九時に入ったところで空に限界が来る。

 フロントガラスに雨粒が落ちたので、窓も全て閉める。

 おかげでバスの中の熱気は外に逃げないようになっていた。


 そして終バスの二十時直前の便。

 雨の降りはまだ弱いけれど、すぐに止む気配はない。

 大学の停留所には長い列ができていて、傘の花が咲いている。

 人数はぎりぎり入れるかどうかといったところ。

 食材の余りを持っている人とか、木の箱とか持っている人がちらほらいる。

 雨脚が強くなることを考えて雨合羽あまがっぱを着てから外に出る。

「乗り切れるよう奥の方にお繰り合わせくださーい」

 案内をしてから乗車を開始する。

 たまにこう言う行事には他校の生徒さんが紛れていることがあるので、念のためはさみを手にする。

 先頭はコントラバスの大きなケース。

 勅使河原さんが「お願いします!」と言ってぺこりと頭を下げ中へと補助なしで入ってゆく。

 もう、慣れて来たんだなと思うと、ほっとする反面少し寂しい。


 そして、終バスの列の中に有奈華ありなかさんを見つけた。

 五、六人の集団の中にいて、何か楽しそうに話をしている。

 学校、来ていたのか。

 皆さんの学生証を確認するため目線は下に向けるけど、どうしても有奈華ありなかさんの表情が気になってしまう。

 もう定期代わりの学生証の提示の案内をしなくても大丈夫な時期。

 特に案内することもなく学生さんの列は車内へと吸い込まれていく。

 皆さん手には食べ物の残りが入った袋や、お酒や木の箱などを持っていた。

 有奈華ありなかさんはさっと学生証を見せると、バスの中に消えていく。

 その間も友達と思しき方達との会話は途切れることなく、その熱気を車内へと運び入れていた。


 外から一度扉を閉めて、大学のロータリーから道路へとバスを誘導。

 その間にも徐々に雨脚は強くなる。

 ライトの光が雨で乱反射して拡散される。

 結構降っているから、自転車が少なくなって良いけど。

 結構人数乗ったけど、ご老体は雨で車体が冷えたのが良いのか、いつもより元気に道へと出る。

 一時停止したところで車内に戻ると、もあっとした人熱ひといきれを感じる。

 雨のために窓を閉め切っているので車内中に言葉が入り混じって一つの塊のようになっていた。


 生徒さんに通して頂きながら入り口横の車掌台に立ち、発車の合図。

 ギアがローに入ってするすると進み始める。

 雨がフロントガラスを叩き、ワイパーが緩慢な調子でそれを拭う。

 後方確認のため車内に視線を動かすと、車掌台から二人挟んだ位置に有奈華ありなかさんが座っていた。

 こちらを見ることなく、先ほどのグループの男子生徒さんと楽しそうに何かを話している。

 左奥には勅使河原てしがわらさんのコントラバスの頭が、人の頭の合間から微かにのぞく。


 大学の前の坂を下り始める頃には雨脚も強くなって来た。

 ここは二車線あるのですれ違いの時に降車しての誘導は必要ない。

 けれど、雨が降る前に大学から出発した自転車の生徒さんなどもいるかもしれず、巻き込みしないよう周囲を確認する。

 後方確認すると必然的に有奈華ありなかさんが目に入る。

 相変わらず楽しそうに会話をしている。

 部活にでも入ったのだろうか。

 新入生歓迎会だし、今日は。

 声は聞き取れない。

 たまに聞こえる笑い声にちょっととしてしまう。

 何楽しそうにしているんだよ、全く。


 待てよ。

 何いらついているんだ、ぼくは。

 有奈華ありなかさんがわずらわしかったんじゃないのか。

 ぼくに構わず他の生徒さんと一緒に楽しそうにしているなら、それに越したことは無いじゃないか。

 なんで、他の生徒さんと話をしているのを見て心を乱されているんだ。

 自分でどうしてこういう感情が生まれるのか説明がつかない。

 昼に会った所長や成瀬先輩や片倉先輩、そして運転しているスカさんの顔を思い浮かべる。


 駄目だ、業務に集中。

 手にぎゅっと切符切りのはさみを握ったまま左手で手すりをつかみ、頭を前方と後方に振り雑音を頭から排除すべく路面の安全確認に意識を向ける。

 もうすぐ次のバス停。

 案内をするも、誰も手を挙げる気配はない。

 いつもの事だけれど、ぼくの言葉が誰にも届いていない錯覚さっかくに襲われる。

 思考がどんどん悪い方向に向かっている。

 二つ目のバス停の案内。

 これも、誰も手を挙げず。

 停留所にも誰もいなかったので、ここもそのまま通過。

 道は平地に入り、次の分かれ道の停留所までは畑の中のまっすぐな一本道。

 信号もない。

 エンジンは回転数を保ったまま舗装された道を速度を変えずに進んでゆく。 

 単調な直線道路だけど、なるべく意識を安全確認に集中させる。


 そう、

 だから、気づくのが遅れた。

 そして、気がついた時には手遅れだった。


 安全確認をしているうちに、違和感に気がつく。

 さっきまで車内を満たしていた会話が、徐々に落ち着いてきていた。

 そして、次の違和感。

 ワイパーが雨を拭う音に合わせて木の床を叩くような音。

 違う、もっと乾いた響き。

 車内を見回す。

 ぎゅう詰めだから、どこから聞こえて来るのかにわかにはわからない。

 そして、少し赤みがかった瞳と目が合った。

 有奈華ありなかさんが、にっと口の端を上げる。

 足元を見ると、木の箱を足の間に挟んでそれを両手で叩いていた。

 リズムは雨音の中ワイパーと絡みながら跳ねるようで。

 何をしているんだと思ったけれど、その時にやっと気がつく。


 そこに、甲高い金属音が混じっている事に。


 なんだ、この変なリズムは。

 ねじくれた、変な感じの音。

 甲高く叫び、誰かに噛みつきたいけどそれもできず、から回っている感じ。

 そのどこかに行ってしまいそうな音を、箱を叩く乾いた暖かい音が繋ぎ止めている。

 そして、徐々に木を叩く音に引き寄せられて安定してゆく金属音の出所に気づく。

 これ、自分の手から出ている。


 手元を見ると、超高速で手が痙攣けいれん運動を繰り返していた。

 そこに握られる、切符切り用のはさみ

 これが、自分の右手が最近凝っていた原因。

 鉄道の駅員が鋏で音を刻むのと同じように、ぼくも鋏で随分といびつ

リズムを叩いていた。


 ゔーんゔんゔん、と低く唸る瑞々しい空気の波がさらにそこに絡んで来る。

 後部座席へと目を移すと、そこにはケースから出されたコントラバスの頭が見え、その頭は楽しげにゆらゆらと揺れていた。

 叩きつけるように跳ねる回る弦の音が加わって、偶然始まったと言う範囲に留まらない、わくわくした感じが車内に満ちて行くのがわかる。

 何かが期待されている。

 右手の鋏を止めると、その不自然さが目立つ状況。

 止めるきっかけはないか。

 気がついて外を見ると、もうすぐ次の停留所。

 全ての音が止まる。

 鋏の音を除いて。

 寸刻のソロが終わった後に案内。


「次は分かれ道。分かれ道。お降りの方いませんか」


 拍手。

 どこからも手は上がらない。

 そして始まるぼくのはさみの音。

 おい何故また始めた。

 いやだって美味しいだろ今の間。

 それに続いて加わる有奈華ありなかさんの箱を叩く音。

 そして弦とワイパーも加わる。

 ワイパー?

 何故今ワイパーの音まで止まっていた?


 宵闇よいやみに照らされた停留所には誰もいない。

 確認のために前を見たけれど、いつもは車両前に溜まってスカさんを見ている女生徒さん達も全員ぼくのことを見ている。

 停留所はそのまま通過。


 ぼくの手は変化し続ける。

 音はねじくれているけれど、軽快なものへと変化していた。

 そして、そこに細く長い線を引くように絡んで来る、もう一つの音。

 次第にその音は揺らぎ、金属音に寄り添うようで、挑発するようで。

 音は人々の間から這い上がるように立ち上り、天井にぶつかり、そして車内の隅々まで降りてゆく。


 この声は知っている。

 一度聞いたことがある。

 歌詞はなく、唸るような低音から天へと駆け上る高音へと行きつ戻りつして車内を満たす。

 けれど、その声は主役ではなく、あくまではさみと合わさることで成立させていて。

 そこがまた、腹が立つ。


 へぇ そんなもんかぁ

 何ですか 勝手に絡んできて

 タチ悪い?

 ええ 本当に

 だってそりゃ キミが素直じゃないから これでも待っていたんだよぉ

 こっちは それなりに覚悟があるんです

 覚悟?

 仕事やっているんです 学生風情に遊ばれたくない

 言うねぇ でもさぁ

 何ですか

 ボクだって生半なまなかな気持ちで キミにちょっかい出してるわけじゃない

 口では何とでも

 だから 体ごと キミにぶつかることにしたのさぁ

 体って

 そう 頭 唇 喉 手 胸 お腹 お尻 足 キミが興味あるなら ぜんぶ

 ちょっ そんなにぐいぐい来られても

 覚悟だよぉ キミは答えてくれるかい ぼくの覚悟に

 それは……


 クラクションとブレーキ。

 おんぼろとは思えないくらい滑らかにバスは止まる。

 ここに到りて、口に出すべき返事は一つ。


「川野辺駅、川野辺駅。お忘れ物なさいませんようご注意ください」

 途端に、今日二回目の拍手。

 雨が車体を叩く音より激しくそれは車内を満たした。

 生徒さん達の声が車内に戻り、時折歓声も混じる。

 慌ててはさみ車掌鞄しゃしょうかばん仕舞しまって扉を明けに行く。

 その途中でも生徒さん達がハイタッチしようとして、なかなか進めない。

 扉を開けると、外の新鮮な空気がどっと車内に入って来る。

 外に立つと雨合羽に雨が当たり、体が冷えて心地よい。

 そして今度こそ次々に降りて来る生徒さん達のハイタッチの雨から、逃れることはできない。

 時折いえーとか、よかったよとか、また聞かせてね、とか何か言葉をかけて来る方もいる。

 その中の一人の男子生徒が、有奈華ありなかさんが叩いていた木の箱を抱えていた。

 よく見るとその箱は後ろに穴が空いていて、成る程叩くと音が響きそうな形をしていた。


 人の流れは途絶え、皆さんが駅や街へと思い思いに消えてゆくのを見届ける。

 そして、車内へ戻り降り忘れた方がいないか確認。

「お降りのお客様は他にいらっしゃいませんか」

 中には、二人のお客様が残っていた。

「ご、ごめんなさい、降ります降ります! 今片付けますので!」

 勅使河原てしがわらさんがわたわたしながらコントラバスを楽器ケースの中に収納しようとしている。

「ゆっくりで大丈夫ですよ。手伝いましょうか?」

「じゃ、じゃあ最後にビニール上から被せるのを手伝ってもらえますか?」

 床に倒したケースにそろりとベースを入れると、蓋をしてから大きめのゴミ袋を被せた。


「きょ、今日はすみませんでした! 車内で楽器出したりして……」

「大丈夫です。きっかけ作ってしまったのはぼくですし」

 そして、ちらりともう一人車内に残ったお客様を見る。

「い、いえいえ。で、でも、今日は楽しかったです! やっぱり犬吠埼さんは音楽が好きだったんですね! 六音ろくねちゃんの言う通りでした!」

 勅使河原さんは外に出ると友達の傘に入れてもらい、駅へと向かう。

 バスを道路へと誘導するために外に出たぼくに、時折振り返っては何度もお辞儀をしてくれた。


 雨で頭を冷やす。

 うん、多分さっきよりは冷静になっていると思う。

 そう確信できてから車内に戻る。

 誘導を終えて車内に戻ると、そこにはお客さんが一人。

「拭くかい?」

 そう言って首に巻いていたハンカチを差し出す有奈華ありなかさんは、ドヤ顔で来るかと思っていたけれどそんな事は全くなくて。

「大丈夫ですよ、自分のありますから」

 女の人の身体中を拭いたハンカチなんて、使うわけにはいかないですし。

 ぼくは車掌台に立つと、安全確認をしてから出発の合図をする。

「いつもの所までで、いいですよね」

「うん、お願いするよぉ」

 有奈華ありなかさんはぼくの立つ車掌台から二人分開けて座っていて、もう人がいないと言うのに近づいてこようとしなかった。


 路面の水を跳ねる音とワイパーの往復音が、急にがらんとしたバスの車内にやたらと響く。

 二人目を合わせることなく、その会話は始まった。

「あのねぇ」

「はい」

「喉、大丈夫?」

「これですか。気にしないで下さい」

「ボクのせい?」

「違いますよ。ちょっと大きな声出してしまっただけです」

「ごめん、試すような事しちゃって」

「いいですよ。降参です」

 これ以上言葉で音楽が好きだ嫌いだと言っても、何の説得力もない。

 あの有奈華ありなかさんとのやり取りを、ぼくは文字通り不覚にも楽しいと思ってしまった。

 だから、止める機会があっても続けた。


 有奈華ありなかさんはつぶやくように、ゆっくりと言葉を続ける。

「キミはさぁ、やっぱり心の中に音楽があるんだよ。それで、何かあった時に音楽で自分を鼓舞しているんだ。自分で自分を励ましているのさぁ。それが歌だったり、切符切りの鋏だったり」

「いつから、気づいていたんですか」

「初めて会った日。歌はさぁ、キミが外にいた時に吐く息が歌になっていたから。その前にキミがバスの中にいた時、鋏持っている手がちょっとリズム刻んでいるんだもん。かすかに。多分雪が降って停車していたからさぁ、焦っていたんだよ、きっと。ぼくというお客さんをどうにかしなきゃあって。それで、無意識に音に頼ろうとしていた。鋏のリズムに、声に。翌日うちに来てくれた時にさぁ、右手が凝っているの、気づいてなかったでしょ。きっと無意識に動かしているんだろうなぁって。この子本当に音楽が好きなんだろうなぁって」

 手癖のことは、成瀬先輩にも指摘はされていた。

 切符切りの駅員さんが軽快に鳴らすはさみの音は、鉄道では馴染みのものだった。

 それで、ついやってしまっていた。

 何回か指摘されて直したつもりだけど、無意識に小さな音で鳴らしてしまっていたのか。


「それにしても、うまく乗せましたね」

「ごめん……」

「いや、すみません、そう言う意味じゃないんです」

「みんなにあの車掌さん面白いリズム刻むよって。そう言っていろんな人にキミの隣に座ってもらったんだぁ。すごく小さな音だけど、隣に座れば聞こえるからさぁ。そうやってみんなの注意を何となくキミに向けるようにして。一人でも多くの人がキミに注目するようにするために、ボクはキミの隣に座らないようにしてさぁ。あとは、テッシーにお願いをして、凍江こごえクンがさぁ、すごく面白い音出すから、一緒に彼の才能を引き出してみないって、提案して」

 ああ、今週泊まっていったのはその計画の打ち合わせをするためだったのか。

 勅使河原てしがわらさん、ぼくの隣に座って、音を刻んでいるか確認していたんだ。

「あとは、人が一杯になる今週末の便びんで証明をしようって決めて。人がいっぱいだから、きっと凍江こごえクンも無意識に鋏の音を大きくするだろうなぁって。あと、周りの人たちもお酒とか入ってノリが良くなっているだろうし。新入生歓迎会で会った人にカホンってあの箱型の楽器借りて」

「横須賀先輩の協力はどう取り付けたんですか」

「何もしないよぉ」

「何も?」

「あれは、キミの先輩が勝手にしてくれたことさぁ。本当に、ありがとうございます」

 ぺこりと、有奈華ありなかさんは頭を運転席に向けて下げた。

 スカさんは運転席で、ゆっくりとブレーキを踏む。

 ご老体とは思えない滑らかさで優雅に減速をし、有奈華ありなかさんの家へと続く道の脇で停車した。


「着きましたよ」

「うん」

 ここに来たら、もう言わなきゃいけないことがある。

 背筋を伸ばして、少し離れて座る有奈華ありなかさんに顔を向けた。

「練習、受けます。有奈華ありなかさんの」

 だっと音がして有奈華ありなかさんがぼくの胸に飛び込んで来た。

 その勢いで、ぼくはバスの壁へと押し付けられる。


「よかっっっっったぁ……」

「ちょっ、有奈華ありなかさん、離れて……」

 それでも強引に引き離そうとしなかったのは、顔を俯かせて、肩が小刻みに震えているのに気がついたから。

 俯いた頭と手が胸の辺りに当たっていて、そこがじんわりと暖かい。

 押し戻そうとして上げた手を宙に彷徨わせ、それからゆっくりと肩に置いた。

 しばらく、その格好のまま二人で流れ続ける雨音を聞いた。

 何か言った方がいいのかもしれない。

 けど、言葉は思いつかない。

 この距離感は苦手だ。

 やっぱり、妹と他の女の人とは違う。


 でも、できることもある。

 指で肩を軽く叩く。

 羽のように軽く。

 その間隔を少しずつゆっくりにしていく。

 有奈華ありなかさんの呼吸も徐々に落ち着き、顔を上げた。

「ごめっ、ごめん。ダメだぁ、ボクの方が年上なのになぁ」

 少しだけ目が赤いし、息が熱い。

「うん、大丈夫、ありがとぉ。もしキミがこれで音楽自体を嫌いになってしまったら、どうしようって。そうなっていたら、自分が許せなかった」

 ああ、でもこれだけは言っておかなくちゃ。

「でも、ちょっと、いきなり歌えないかもです」

「どうしてだい? 喉の調子?」

「そうじゃなくて……」

 どうしよう。説明するのか。でも、正直あまり話すのも聞くのも愉快な話じゃないし……

 胸に置かれた手が少しだけ力が込められた。

「今日は、止しておこうかぁ。また、話したくなったら、ね?」

 ぼくは頭を縦に振った。


 有奈華ありなかさんは微笑むとつつっと後ろに下がると、何やらポケットをごそごそと探った。

「でも、本当にありがとぉ。これしかないけど、お礼、受け取ってくれるかなぁ」

 おずおずと出された手に小さな赤い長方形の箱が握られていた。

「ぶっ」

「な、何で笑うんだよぉ!」

「何ですか、急に都こんぶって」

 昆布に味付けした駄菓子だ。

 なんか、有奈華ありなかさんのイメージだともっとチョコとかそう言うのが好きそうなのにな。

「し、新入生歓迎会で大量に配られていたからさぁ、これしか今手持ちで感謝をつたられるものがなかったし……」

「ありがとうございます。頂きます。丁度昼に甘いもの食べましたし」

 桜餅だから塩っ辛い桜の葉っぱが巻かれていたけれど、そこは黙っておく。

 ぼくが受け取ると、有奈華ありなかさんはやっと屈託のない笑顔を浮かべた。


 傘が闇夜に消えてゆく。

 何度も、何度もそれはこっちに向かって振られた。

 どこかでしゃがれた声で猫が鳴く。

 扉を閉めて安全確認をする。

「スカさん、発車オーライです」

 クラッチが繋がり、ご機嫌に坂道を登り始める。

 スカさんにも、色々確認したいことが山ほどあった。

 どうして、有奈華ありなかさんに協力しようとしたのか。

 何でエンジン音とワイパーのリズムを合わせられたのか。

 でも、それをするにはあまりに疲れすぎていた。


 今日悪さをしていた自分の右手を見る。

 そこに握られた赤い小さな箱から一枚平たい昆布を取り出す。

 自分の分を取った後、運転席に行ってスカさんに差し出した。

 スカさんは無言で一枚取り、口の中に放り込んだ。

「美味いな」

「ですね」


 ぼくは車掌台に戻らずに、そのままスカさんの隣に立って安全確認をする。

 スカさんが何を考えて有奈華ありなかさんに協力したのかはわからない。 

 でも、ぼくを思ってのことだという点は、疑わない。

 だってスカさんは、ぼくにとって最高の相方パートナーだから。

 む度に口に広がるこんぶの旨味と適度な塩気が、疲れた体を癒してくれるようだった。

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