狭間2

硬いベットで目を覚ました。傷は全て完治していた。


「あれ。俺、生きて…」


「そりゃそうじゃ。チェンジドールが発動したからの。」


隣に黒いローブの婆さんが立っていた。

怪しすぎる。


「チェンジドール?俺に?てことは、誰かがっ…!!」


顔を青くする俺を婆さんは鼻で笑った。


「生きた人間をチェンジドールにするのは高貴なお方のみ。お前のチェンジドールはこれだ。」


そう言って、しわくちゃの手を開いて見せた。燃えて溶けた小さな人形が乗せられていた。


「誰が、俺にチェンジドールなんて…」


「お前の母じゃよ。お前の命が主人から直接狙われた時、守れるように。自分のようにならぬよう、逃げ切れるように…」


母の記憶なんてない。でも、心配してくれていたのか。俺を、愛してくれたのか。目じりに熱いものが込み上げる。


「チェンジドールとしてのお前は死んだ。だから。」


「今度は私がお前を利用する。」


「っ…!!」


涙が引っ込んだ。婆さんが俺に手をかざした。それから、俺の記憶はない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る