狭間

change doll(チェンジドール)。

それはある魔術師が作り出したものだ。

主人の身に何か起きれば、その厄災は全てチェンジドールに起こる。つまり、チェンジドールが壊れなければ、主人に危険が及ぶことは無いのだ。多くは紙や人形で作られるが、高貴な人間は生きた人間をチェンジドールにするという。

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俺の一族は代々チェンジドールだった。

だから、俺もある人仕えていた。とても美しい娘で、誰にでも優しい、誰からも好かれる人だった。チェンジドールである俺にも優しくて、


「ごめんなさいね、でも、貴方のおかげで助かったわ。ありがとう。私を助けてくれるのは貴方しかいないわ。」


と笑顔で抱きしめてくれた。

どんどん俺はボロボロになっていくが、その言葉が生きがいでもあった。


でもある日、俺は聞いてしまった。


「もう潮時ね。あの体じゃ無理。それに私、あの子飽きたわ。ね、パパ、そろそろ新しいチェンジドール買ってよぉ。今度は、とびきり可愛いのがいい!」


ゆっくりと血の気が引いていくのが、わかった。

俺は、俺は…


全力で走っていた。誰かが叫んでいる。喉が酷く痛かった。


気がついたら山の中だった。逃げられた、のか。

全身から力が抜け、崩れ落ちた。ゆっくりと息を吸った。


そんなわけなかった。甘かった。

後頭部に固いものを押し当てられた。


「初めての自由は堪能できた?ならもういいわよね?さよーなら。」


痛いと思う隙もなかった。

俺は地面に倒れ伏した。


「私って本当に優しいわよねー。」


もしこの世界に悪魔がいるなら、こんな顔をしているのかもしれない。俺はそう考えながら、意識を手放した。


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次も彼の話です。

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