「あなた」と心理カウンセラーの20の対話から紐解かれる物語の世界に、知らない間に引き込まれていた。
ばらばらになった真っ白なピースのパズルをカチリ、カチリと嵌め込んでいくような、無機質的で、不可解で、緊迫した感覚が、徐々に浮かび上がる真実へと誘う。謎が解き明かされる臨場感は圧巻だった。
人の心の薄暗い部分に踏み込み、葛藤、恍惚、絶望、それらの感情を巧みに描写された作者様に尊敬の念を抱かずにはいられない。これはたぶん、ミステリーと呼んで良いと思う。
この本格ミステリーをぜひ多くの人に読んでいただきたい。そして、「あなた」の真実を見届けてほしい。