17 追いかける話
……。……おはよう。そこにかけて。今日は、コーヒーはやめようか。カフェインの摂りすぎもあまりよくないからね。元気? そう。元気、って曖昧な聞き方だと思わないかい? 肉体的にも精神的にも、健康であれば「元気」と言えるのかな。君はどう? 今日の、十七日めの君は。元気かい? はは、頷くんだ、そうか。……僕にはあまりそうは見えないけど……。
昨日、話してくれたね。夢の話。あれはまだ見るの? ……いいよ、焦らなくていい。答えようか答えまいか悩んでいるなら答えなくていい。君が僕に話してもいい、と思ったことだけ聞かせてくれたらそれでいいんだ。うん? いいんだよ、それで。僕は君を尋問したいわけじゃない。こうやって机を挟んでお茶でも飲みながら、君と話がしたいのだから。
うん、今日は僕の話をしよう。君の話を聞いてばかりも悪いしね。……聞いてくれる? ありがとう。
君、鬼ごっこで遊んだことある? 鬼ごっこだよ、誰か鬼を決めて、その鬼から逃げる遊び。うん。うん。僕はどんくさくてね、いつも鬼に捕まってた。僕が遊んだ鬼ごっこは捕まった子も鬼になるルールで、誰かを捕まえなければ永遠に鬼のままなんだ。
僕、運動神経良さそうに見える? 見えないでしょう? 実際運動は苦手なんだけど。僕だけが誰も捕まえられなくて、いつもひとりぼっちの鬼で時間切れ。それが何度も続く。
ところで、ねえ、追うほうと逃げるほう、どっちが強いと思う? うん、普通、追うほうに思えるね。でも、あのときばかりは、鬼の僕が追い詰められていた。誰も捕まえられない、またひとりで終わる。それが僕はとても怖くて、追いかけているのに追われている気分だった。結局僕は鬼ごっこに誘われることもなくなって、苦い境遇から抜け出せたけれど、もしあのとき誰かを捕まえられていたら、どうなっていたかな……って。うん、なんか、ゆうべそんな感傷に浸ってしまってね。すまない、暗い話だったね。そんなことはない? ありがとう。長話になってしまった。今日はこれで。……じゃあ、ゆっくり休んで。
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