11 呼称の話

 ああ、おはよう。昨日はすまなかった。もう大丈夫? ……君が言うなら、うん。僕は信じようか。今日はね。


 うん? ああ、うん、言ったね。昨日? いや一昨日の話か。ちゃんと覚えているさ、もちろん。え、僕はどうなんだって? うーん、確かに、君のことはこれまで名前で呼んでこなかったけど……。どうしたものかな。ちょっと待ってくれ……ええと、ああ、……うん、いいだろう。ごほん、んだね? うん、わかった。じゃあ僕はなるべく君を名前で呼ぶように努めよう。え? ああいや、たいしたことじゃないんだ、普段からあまり相手の名前は呼称しないようにしていてさ。もう癖になってしまっているから、気をつけるけど、戻ってしまったらすまない。ああ、そうだね、お互い様か。先生と呼ばれると本当にこそばゆいものがあるな……。


 では、「笹貫ささぬきとおる」さん。はは、面接みたいな返事だね。


 そう、君は透さんだ。と、お、る。綺麗な名前だし、よく似合っていると思うよ。それで、透さん。十一回めの今日は何の話をしましょうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る