13 事件の話

 物騒な世の中だ。え? ああ、おはよう。ごめんごめん、ニュース記事を読んでいて。さ、始めよう。今日は何回めかな? そう、今日は君に聞いてみようと思って。はは、そんな顔しなくても。十回め? それくらい。うん。近いね。ニアピンだよニアピン。正解は十三回めでした。夜はよく眠れてる? いや顔色があまりよくないからさ。それとも、寝起き? ぼーっとしているようだけど、部屋に戻る? ん? うん、僕は構わないよ。そう、平気なら続けようか。


 今日は……え、これが気になるの? ……そうか。うーん、うん。僕が見ていたのはね、隣の区で起きた殺人事件の記事なんだけれど……。君をあまり不安がらせるのもよくないし、こういった話題はね。面白半分でするものじゃないだろう? 命はいついかなるときも尊ばれるものであるべきだ。……僕は医者じゃあないけどね。そう見える?


 ……女性の遺体が川を流れていたという話だよ。君があんまり真剣に見詰めるものだから、少しだけ教えたよ。でもこれだけだ。過度な刺激はよくない。うん。そう。物騒だよね。


 僕? 僕は残念ながら大丈夫さ、仕事が恋人ってやつなんだ。いや、住んではいないよ、さすがに。……君はかっこいいからモテそうだね。うん? うん、男の僕から見ても格好いい容姿をしていると思うよ。君は。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る