6 読みものの話

 おはよう。今日も調子がよさそうだ。えっ? 思い出した? ……誰を? ああ、僕のクマのことか。そうだね、言っていたねこの間。今日はその話がしたいの? うん……うん、まあ、いいか。いや、何でもないよ。さあかけて。ちょうどコーヒーを淹れたばかりだ。君は甘いほうが好きだったね。ミルクとシュガー、用意してあるから自由に使って。


 ……あのときはね、ちょっと読み物をしていたんだ。のめり込みすぎちゃって、それでつい夜更かしをね。そんな面白いストーリーだったのかって? 面白くはなかったよ。でも興味深くはあった、かな。どうやって紐解いていこうか、ってとても考えた。ミステリー? うん、そうとも言えるかな? まだまだ僕らの理解が遠く及ばないところにあるよ。


 何? 僕はいい人そうに見える? はは、それっていわゆるあれだろう、いつも「いい人」で終わる、のいい人。でも嬉しいよ、そんなふうに感じてくれていたのは。


 君? 君は、そうだね、器用そうに見える、かな。いまのところはね。え? いやそんなんじゃないよ、えーとね、お手玉をしながらあやとりもできそう、ってところかな。例えだよ、例え。だから例えだって。はい、今日は終了。六回めは終わろう。うん。僕の顔はいいから。自分でもどうかなと思ったよあの例えは。笑う行為は良いことだけどそういった笑われ方は想定してなかったな……。

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