第二話 今の自分にできること
不本意だけど、今が室町時代。場所は、伊豆国は韮山の堀越御所。そして、俺は足利茶々丸。納得せざるを得ない。
次に
だけど、今はまだ、早雲自身が先代今川義忠戦死を受けて調整した通り駿河府中の今川館は小鹿一党が仕切っているはず。だから、時間はあるはずだ。今川家嫡男竜王丸は、どこかの山中に逼塞しているはずので、実権を取り戻す
さて、俺の運命だが、これから、史実でどうなるかというと、まず、受牢幽閉イベントがある。親父に土牢に叩き込まれてしまう。
それから、親父が死んで、牢を脱出した俺が義母と弟潤童子を殺害、元服しないまま、堀越公方を継ぐことを宣言。
重臣を惨殺したりして評判が落ちたところに、早雲様が攻めてくる。
命からがら逃げだして、南関東を転戦した挙句、甲斐で自刃。
まあ、諸説あるらしいけど、ともかく、二十一か二くらいで死んでるんだよねえ。
ブルリッ
あ~、やだやだ。ぞくっとしたな。
俺が
義母のいない時に限るけど、「あにうえ~」とか
すぐ下の、といっても五歳になった、
はあ~、いくら戦国時代でも世知辛すぎやしませんか? あ、いやいや、戦国時代の始まりは、北条早雲の伊豆討ち入りが始まりなんだ。俺の没落とともにひとつの時代が始まった。格好よく言おうが、気が滅入るのはおなじだな。
あれ、清丸は天龍寺に預けられるはずだけど、堀越御所内にいるよな。たしか、聞くところによると、生まれた時に親父が後嗣にはしないと宣言して、僧にすることは決まってるんだけど、行き先決まってないのかな。時間があるなら、関係修復したいもんだけど・・・
まあ、弟たちのことは置いておこう。最近の、親父の夜のハッスルぶりからすると、あと何人かできてもおかしくない、っていうか出来るんだけどな。戦国の不死鳥小田氏治の父になる小田政治とか、近江守護六角氏綱の正室とか・・・
あ~、取り敢えず、家族には関係修復(っていってもまだ壊れてないよね?)メインで。
あと、気になっているのが、廃嫡&受牢幽閉の理由だ。素行不良ってことだけど、まさか、無礼討ちとか辻斬りとかしてないよな。まだ、数え十歳だよ無理。 あ、
うん。改めよう。バサラはだめだ。
親父は、京風、雅な、公家好み。何年か前、古河公方と幕府が和睦して、親父の存在意義がなくなってしまったから、気力が衰え、病がちになってしまっているようだし。
それだけで、廃嫡&受牢幽閉フラグが折れるとも思えないんだけどなあ。
あとは、信頼できる家臣が欲しい。って言っても、まだ名前を知らない人が多い。軍事的には、まず山内上杉だけど、元服前の子供のいうことなど聞いてくれる訳も無し。
取り敢えず、傅役のおっさん。関戸播磨守、ひげもじゃの大男。下田深根城の城主でもあり、俺も下田には何度となく訪れたことがあった。堀越御所よりも、深根城の方が知った顔が多いくらいだ。だが、下田には行かない。行ってどうなるものでもなし。とにかく、信じてもらうには、工夫しないと。そういえば、ああ、あいつが殺されるのってもうすぐじゃないか。確かに頭がいいやつらしいが、俺を見る眼は嫌だね。あのことを話せば、理解はされないまでも話は聞いてくれるだろう。
ほかに家臣というと、同世代の若衆とか、小者とか。母が死んでから、引き籠っている俺を心配してか、ときどき覗きに来るのがいたな。名前、なんて言ったかな。あ、葬式には出ましたけどね。女の葬式だからか、
あとは、領民の印象も良くしないとなあ。ここは一つ、前世の知識で・・・・何ができる?
必死に考えて、千把扱きができそうかな、と思いついた。あとは、金鉱探し位かな。伊豆は人口が少ないがその割には豊かな国だ。何し負う暴れ川でもある狩野川だが、豊富な水量で豊かな実りを齎してくれる。そして、韮山は国中の米が人が集まる商都でもある。大きな商人と渡りをつけよう。
畑に豆とかいうけど、なんだっけ? 空中窒素固定? 大豆ってなかったよなあ。見たことないし、赤エンドウはおかずに出たことがあるかな。でも、種はないよなあ。豆なら何でもよければ、
というわけで、一年ほど経って、千把扱きが完成しました。その辺の村に教えて回ろう。ちょうど、コメの刈り入れ時期だしな。
金鉱の場所も大体わかるし、播磨と親父に話して、遠出の許可をもらわないと。
というわけで、旅に出ることになりました。伊豆の皆さんに、
親父は、渋ったけど、許可を出してくれた。
まず、韮山の鍛冶に作らせた千把扱きの見本を持って、商家に生産の約束を取りつけて、古奈温泉から、瓜生野、修善寺、湯ヶ島、土肥と回る予定だ。
十人程の一行になる。関戸播磨守とその郎党、播磨守次男の弥次郎、荷駄馬が三頭。
荷駄の中には、竹製の千把扱き。鉄使えなかったんだよ! 子供のおもちゃにするには高価すぎるってことらしい。竹製で上手く脱穀できるかなぁ。手元にある稲束では上手くいったけど。
それはともかく、明日は温泉だ。
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