#3 VIRTUAL REALITY

「ただいま」

 メグへの取材もそこそこに帰宅した。

 ニナという女の子がやたらと私たちのテーブルを横切るものだから居心地の悪さを感じて切り上げたというのが正直なところだ。嫉妬しているのが丸わかりなのはおもしろかったが。

 それにしても、まさか白黒ハイロの中身が男だとは夢にも思わなかった。向かい合わせになってまじまじと見たところとても整った顔立ちをしていた。あれはモテるだろうが、ニナいわく女性を避けていたようだ。もったいない。

 メグのバックグラウンドを知り、世の中には本当にいろいろな人間が居るものだと思い知った。

 小説を書くためにはやはり人としての経験値というのが大きく関わると思う。メグとの出会いは確実のそれを向上させてくれた。

 さて、そろそろハイロの配信が始まる時間だ。パソコンを立ち上げ、YouTubeを開く。


『こんばんは、リコさん』

――待ってたぞ

『あの後、ニナがすごくうるさくて大変だったんですよ』

――あいつ絶対お前のこと好きだろ!

『あはは、そう見えました? でも、そんなんじゃないですよ、きっと』

――んなわけねーだろ


 こうしてまたハイロの雑談配信が続いていく。

 いつしか私にとってこの時間は人生の憩いになっていた。


「リコ先輩」

『リコさん、佐々木さんが呼んでますよ?』

――いいよ、ほっといて

「先輩、いいかげんやめましょう……」

――やめるって何をだよ

『ほら、佐々木さんを困らせちゃダメですよ』

――だから何をやめるんだよ

「先輩、戻ってきてくださいよ!」

『戻ったほうがよさそうですよ?』

――どこにだよ

「ごめんなさい、先輩、これ外します!」


 視界がぐちゃぐちゃになったかと思ったが、そこには見慣れた自分の部屋があった。

 振り返るとそこには後輩の佐々木が立っていた。

「おい佐々木。お前なんであたしの部屋に……って、なに泣いてんだよ」

「先輩、もう終わりにしましょう……。もう何ヶ月そうやってたと思ってるんですか……」


 涙を流す佐々木の手にはヘッドマウントディスプレイが握られていた。


『リコさん、また来てくださいね』


 どうやら今日の配信は終わりのようだ。


――おつかれ~

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夢見るアイツはVの者!? 無名 @kei304

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