第56話
長いトンネルを抜け、暗かった車内に陽が入り徐々に照らされる。眼前には青い海、白い砂浜そして輝かしい夏がすぐそこに存在している。考えていたことを一瞬で吹き飛ばすような景色の良さで、窓から見える光景に釘付けになっていた。
宿から見える海も景色が良くて、グラス片手に乾杯したいものだな。部屋割りは5人らしく同室は1年生男子で固まった。
宿に荷物を置き、支給された海パンを履く。俺のは尻に大きく「なつ」と書かれたセンスのない青いパンツだ。他4人にクスクス笑われる始末となっているが、お前らも大概だぞ! 中でもテルの唐草模様は滑稽だ。どの時代の泥棒だよ! とツッコミたくなるのは無理もない。
どのみち俺たちは奇抜な色パン5人組という称号が与えられそうなくらい、浮いているような感じがする。まぁ、女性たちの反応を見て着替えるか否か決めましょうかね。
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集合場所に行くとマナトさんたちが着いていたので合流したのだが、開口一番にさくま先輩の爆笑が周りの目を集めることになった。
「ぶわっははあはは!! お前らなんだそのへなちょくりんな格好は…! くっかかかっかか! だっせぇ!」
周囲の人からも何あれダサッ! という声がチラホラ聞こえてきて穴があったら入りたい状態になっていたが、後ろから現れた女性陣を一目見ようとそんなことを気にしている余裕ではなくなった。
「みんなー、おまたせー!」
3年の新田先輩が手を振り振りし、他9名を引き連れこの地に降り立った。カラフルな色合いで出るとこ出して締まるところは引き締まっているナイスバデーな女性たちが、日の元にさらされている。
俺の女神、実花さんはというと…トップの紐が首の後ろで結んであるタイプの水着で、普段着痩せしていて見ることのできない谷間が強調されている。あの中に腕を入れてホクホク温まりたいなどと考えてはいけない。この後何かしらの遊びの時に考え詰めてしまうからだ。
目移りするように谷間を追っていくと、ひときわ小さいお胸に辿り着いた。顔を伺うと…やば、安原さんだった。1人だけフリルの付いた可愛らしい水着でテルの心をグッと掴んでいるようだった。
「さぁ、みんな集まったことだし自由に遊べ!俺はバーベキューの用意するから出来たら呼ぶよ!」
現在時刻は昼前、水に慣れてメシ食ったら再び海水浴とは粋ですな。こんな日差しの強い日にゃビール飲んで寝るのが一番だな、とかインドがとても言いそう。
「俺は泳ぐのがあんまり好きじゃないから古林先輩手伝うとするかな。こんなに日差しが強いんじゃ、ビール飲んで寝るのがイチバンよ!」
…言いおった。まさに言いそうだと思ったセリフをドンピシャで言いおった。何円か賭けておくべきだったか。そうしたら、将来豪遊出来たかもな。
「僕も手伝ってくるよ! ここで女の子に出来る人アピールしとかないとね!」
打算を重ねた悪いヤツも居るもんなんだな。まぁ、せっかくの大学最初の夏休みだから必死になる気持ちも分かる。高校の時の俺がまさにそれ。
つまみ食い 紙島悠也 @kamishima0918
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