第53話

なんとか本日の業務を終了させて、ロッカーで着替えを行なう。男臭いニオイが部屋を満たし、今すぐにでも出たい気分だ。





「ふイぃ~ 今日も疲れたなぁ」





着替えを終えたシュンキが先に休憩室に戻る。続けて正社員の人も出て、ひとりになった。今月のシフトを確認すると、イベントが始まる前までには、なんとか大金を稼げそうだった。そんなことを思案していると、休憩室の方からシュンキと相坂の賑やかな声が聞こえてきたので、ぼちぼち移動してみることにした。





「あ、きたきた成本さん! さっきの話の続きになるんだけどねっ」






相変わらずうるさい奴だな。しかもコイツあれかよ…昼から夕方までのゴミシフトじゃねぇか。それじゃあ働いてねぇだろ。マジでただおしゃべりしに来てるだけじゃねぇかよ…なんて、心の中だけで留めておくしかあるまい。




「君津さんと成本さん含めてあと2人男の子呼んでほしいのよ」



『…なんで? まさかとは思うけど兄南と北峰で合コンとかやるつもりなん』



「ピンポーン! そのとおり! 聞いた話によると君津さん彼女いないらしいし、成本さんも居ないもんね? 居ないんだったら若い男女集まってお茶ぐらい良いんでないかい?」



『…いや、俺彼女居るんだけど』




目を丸くさせ会話が一旦途切れる。え、何? なんか文句あった?





「…へ、へぇ…そ、そなんだ…ちなみに、相手はどなたでありんすか?」





明らかに動揺を隠し切れておらず、語尾が昔の吉原の人みたいになってやがる。なによ、彼女居て悪いのか? こんな冴えない男に彼女居たらおかしいんか?





『相坂に言うとパートのおばちゃんに広められるの分かってるから、言うのやだな』





「…え! い、言わないよ…! ココだけの話でしょ!? 言わない、言わないよ…! だから写真だけ見せてよ!」





必死に食い下がらず、肩をぐらぐら揺らされる。何コイツ、どんだけ俺の彼女のこと知りたいの。仕方なく端末からみんなで撮った写真を見せることにした。





「これが僕で、こっちのタケシの隣にいるのが新井先輩だよ」





彼女のご尊顔を拝し、フラフラと試合で負けたボクサーのような恰好を取る。ボソボソと負けた、負けたよなんて口にしているけど、何と勝負しているんだ?





『まぁ、合コンするのは悪くないと思うよ、シュンキ以外に3人紹介すれば良いんだな?』





「…う、うん、そういうことでよろしくお願いします…一応成本さんと君津さんの連絡先、教えてもらってもいいですかね」

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