第51話

「いらっしゃいませ~」






朝から活気あふれる声が其処彼処より聞こえる。県内大手のホームセンターには客で溢れかえっていて、生活用品やらDIYに必要な物資を買い集めている。





中でも1番多いのは、大量消費物のトイレットペーパーやティッシュペーパーの類だ。この作業を紙出しと言うのだが、朝バックヤードから出してきても1,2時間で空になるから、他の作業に手がつかない魔の時間である。台車に乗せて運ぶも、別用のお客さんにモノの場所を聞かれ、台車を止めてはその場所へ戻ってきても今度はまた別の場所へ行かなければならない。






「ふふ、大変だね成本さん」






昼から出勤してきた同い年の女性が、口元に手を当てニヤニヤと怪しく笑いながらバックヤードから出てきた。いいよなお前は…動かずにレジさえやってれば金入るんだから。






アルバイトの仕事は、主に女性はレジ係や近い商品通路の前出し作業で、男性は品出し作業を中心とした労働作業である。男性の方が大変な思いをしているのに、給料が同じってどういうことだ! と文句を言ってやりたい気持ちもあるが、そこは寛容な心ですでに許している。






終わらない紙出しと押し寄せる客の対応をなんとか終わらせ、バックヤードで別作業をしていたシュンキに声をかける。






『よう、そっちの作業はもう終わりそうか』


「あぁ、もう少しでこの絨毯はキレイに折り畳めそうだよ」


『休憩室で待ってるから昼メシ食いに行こうぜ』


「了解。すぐに終わらせるよ」







午前から立て続けに絨毯を買いに来る客のために、希望があれば丸まっている状態から、折り畳むサービスを行なっていてそれの対応をしているのだとか。本来なら洗剤関係の品出し作業があるのだが、バイトの人数が足りておらず、カウンターから声がかかったのだそうだ。






休憩室に戻り、毎度昼休憩でお世話になっているラーメン屋のメニューを眺めていると、ちらほら昼をとっていたおばちゃん達から声がかかる。





「成本くん、成本くん、ちょっと昼空けたら頼みたいことがあるんだけどいいかい」


『…な、なんでしょう?』


「レジ前のお菓子の補充を頼みたくてね、在庫がサービスカウンターにあるんだけど、お客さん途切れなくて行けないのよ」


『了解です、空き次第速やかに作業します』


「ありがとうね、助かるよ」


「私も頼みたいことがあるんだけど…」


『…な、なんでしょう??』







おばちゃん達の言う事をホイホイ聞いていた結果が、なんでもいうことを聞いてくれる好青年、という印象を持たれたようだ。




そこからおばちゃん達の世間話に巻き込まれて右往左往していると、作業を終えてヘトヘトになっているシュンキが戻ってきた。




「待たせたね、行こうか」

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