第47話
「よぉタケシ、どうやら高みに登ってきたようだな」
『あぁ、お前との勝負楽しみにしてたぜ』
両者間で視線が交差し、火花がバチバチに焚き上がる。俺たちの実力じゃ彼女らに遠く及ばないというのに威勢だけは良い。パートナーたちは呆れ顔である。
「最初、成本くんにサーブ権あげるよっ!」
先ほどの試合でロクに活躍してなかったからかサーブ権を譲渡された。今にみてろこれで点数もぎ取ってやるからな、安原さん。
お互い配置に付き、サーブを始める。狙うはテルのドタマじゃあぁあ! 勢いよく打ちつけ問題なく相手コートにお邪魔するも、前衛の安原さんが軽々と打ち返す。左方向に飛んでいくが実花さんに任せているので、これも問題なく跳ね返してくれる。
しばらく安原さんと実花さんのラリーが続くが、たまに球が乱れて俺やテルの方へも飛んでくる。その時は女性には出せないスーパースマッシュを打ちつけてやるのだ。こんなふうに…
『常しく眠る神々よ、奴らに裁きを与え給ふ!
グリッドヴァン
鈍直球射!』
しなやかに伸びる球筋が、相手ふたりを貫くようにコートへ侵入する。安原さんでも弾速が捉えられなかったのか、呆然と立ち尽くしていた。見事なまでのスマッシュを決めたのである。
「やったね、武くん! 今までの練習の成果が花咲いたみたい」
実花さんは自分のことのように、はしゃいで喜んでくれる。ハイタッチをご所望の様なので遠慮なく交わす。前に視線をやると、安原さんが悔しそうに地団駄を踏んでいた。
「成本くん、なかなかやるじゃないの…! この私から先制点を取るなんて、あなたが初めてよっ!」
スピードスター
どうやら“電光石火の安原”に火をつけてしまったようだ。まずい、このままでは瞬間的に気圧されて、勝負の片がついてしまう。
「だいじょうぶ、私にまかせて!」
怯んだ俺に対し優しく声をかけ、肩に手をやる。後衛から前衛に代わり相手取るようだ。さすが、安原さんの先輩でもあり良きライバル…
再びサーブを打ち試合が始まると同時に、前衛同士の駆け引きが幕を開けた。小手先の技術やら左右に大きく翻弄し合うなど大胆な戦術を繰り広げ、ついに勝敗を決する。
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