第45話
なんとか身支度を終え、マンションをあとにする。しばらく歩くと大学に着いた。コートの方では楽しそうにテルたちがダブルスを行なっていた。
点差は40-15でテルチームが優勢だった。夏合宿に向けて試合をしているようだが、弱すぎて相手になってないようだ。
「安原さん、ちょこまか動いてそんなパワフルショットばっかりずるいよー」
シュンキが嘆いている。テルが後方、安原さんが前方に位置しており、ほとんど安原さんが前方で処理していた。小柄な体格の安原さんはハンデを抱えているのにも関わらず、それをものともしない意気でシュンキチームを圧倒している。さすが全国優勝経験者。
そして間もなくセットを勝ち取り、テル安原チームはハイタッチして勝利を分かち合う。その見事な試合に思わず拍手を行なう。
「お、なんだタケシも来てたのか! どうだ1試合やるか?」
テルの一声で、他の3人も駆け寄ってきた。安原さんとシュンキと西東さん。…ハァ、西東さんには気付かれたくなかったな。一昨日の膝枕や2次会のコトなんかを言われたらたまったもんじゃないから。
「実花せんぱいっ! こんにちは、夏合宿に向けて特訓しに来たんですか? 残念ながら沢木先輩は来てないみたいですよ」
沢木琉生-さわきりゅうせい-(りゅうせい先輩)は、まなとさんと同じ3年生で近付き難い雰囲気を纏っているテニサーの副代表で、ウチの北峰テニスサークルを一部ヤ○サーに変えたのがこの人だと言われている。新歓や飲み会の時だけ参加し、後輩の女の子を喰い漁るというゴミという印象しか無いため、あまり話したことはない。
「りんちゃん、私は沢木先輩と練習するために来た訳じゃないの」
「なら、私たちとしましょうよ! 肩慣らしは終わったので」
シュンキたちとの試合を肩慣らし、だと言うのか。それを聞いたシュンキはぐぬぬと涙目でハンカチを噛んでいる。シュンキたちも弱くはないんだけど、相手が強すぎるのが悪かったんだよな。“電光石火の安原”が相手では話にならんだろう。
「先に君津くんたちとやるから、りんちゃんとテルくんは審判してもらっても良いかな?」
シュンキの目に光が宿り、ぜひお願いしますと準備に取り掛かる。安原さんとテルも得点盤などの準備に入る。
手すきの西東さんがこちらに寄ってきた。慰労会の様子を聞きにきたのだろう。余計なことは言わないで欲しいものだ。
「成本くん、具合は良くなったのかしら?」
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