第44話

『はは、すいません、ちょっと妄想してただけなんで気にしないでください。こどもは欲しいですね!』





そっかー、と満足そうに水滴のついた食器を拭く。今日の実花さんはやけにご機嫌だ。こどもに対しての意見が貰えたからだろうか。大半の学生カップルって男女ともに結婚を意識した会話って引くらしいけど、俺たちはそんなことなかったらしい。







「お昼ご飯も食べたし、どこか遊びに行こっか」









時刻は午後2時。お日様がちょうど真上に来ていて、夏の日差しが目に刺さる。遊びに行くとなるとどこか涼しいところがいいな。俺の頭ではカラオケ…ゲーセン……うーん、良いところが思いつかないな。






『どこか…どこが良いですか? 実花さんの行きたいところならどこでも良いですよ!』







彼氏としては満点な回答だが、男としてはちょっとどうだろう。結局自分で行先決めてないし、決めるどころか委ねちゃってるし、男ならドドンと決めちゃうのが理想ではあるんだけど、俺にはまだ出来そうにないな。






「それならねー、テニスしようよっ! 試験も終わったことだし久々にふたりで打ちたいなーって!」








ふたりで、ですか。実花さん強いからな。男である俺にも容赦なく弾丸をぶち込む人だから、生きた心地がしないんだけど…。まぁ、せっかくのふたりきりだしいいか。テニスデートで決まりですね。






『行く前に汗流しても良いですか?』







行為の後にシャワーを浴びていないので、少しばかり下半身がムズムズしていたのである。今はティッシュで進行を抑えてはいるが、これもゆくゆくは取りたい。タイミング的に今がちょうど良いのだ。





「じゃあ、私も!」







パッと浴びてパッと出る。その作戦でいこうと思ったのに、実花さんに入られては時間を食ってしまうではないか。ぐぬぬ。まぁ、最小限に抑えれば5分…いや10分で終わらせられないこともないか…






『では、行きましょうか』







肩を組んで目的地に向かうもギョッとした表情で立ち止まる。何か変なことでも言ったかな。その後に続けて笑い出す。






「いやいや、シャワー入るとは言ったけど武くんとは入らないよー。何されるか分かったもんじゃないからね~」






………





……












あぁ、なんだてっきりいつものように一緒に仲良くシャワー浴びて1試合おっ始めるのかと思ってた。いかんな、脳内がもう実花さんとのソレしか無くて、恥ずかしくて目も合わせられないよ。

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