第43話

簡易的な清掃を終えると、お腹すいたでしょ、と声がかかる。キッチンの方へ出向き鍋焼きうどんの作製を再開させる。






ネギの切られる音、包丁がまな板に当たる音、具材が投入されおつゆが沸く音、この調理音が今の俺にはとても癒しの効果があり、悪魔と対峙したことを微かに忘れさせてくれる。






そして特製の鍋焼きうどんが眼前に運ばれる。黄金色のおつゆに彩られた具材が浮いており、食欲を掻き立てる。それをハフハフと冷吐息で冷ましながら、口に運んでいく。醤油の出汁がきいておりツルツルとした歯触りが、より一層食事を加速させる。





「味はどうかな?」

『とても美味しいです。出汁もネギもうどんもバッチリですよ!』

「それは良かった。まだ替え玉有るから欲しくなったら言ってね」





それから、お腹が満たされるままに結局3玉ご馳走になったのである。






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「あ、それこっちの食器棚に戻してね」




御馳走を頂いたのだから、片付けるのは当然の所業であるからして2人分の食器を洗った後、少し溜めてあった食器までもを片すことにした。なんだかこんなことをしているとーーー






「ふふ、なんだかこうしてると新婚さんみたいだね」






今まさに心の中を読み取られたかと動揺を隠せないが、実花さんもそう思ってくれていたとは嬉しい限りだ。だからこそ、次に来る質問に身構えて急速的に思考を巡らす。








「武くんはこども何人ほしいー?」











その答えを瞬時に導くかのように、ビジョンが思考を駆け巡る。あぁ、この感じは……









                   ☆














「パパぁ~ ごはんできたよ~」







愛しの娘が呼びに来た。そろそろご飯か。デスクワークを終わらせ、娘と階段をおりる。目の前に広がる光景に胸を締め付けられる。愛する嫁と娘に囲まれ、幸せな食卓を味わう。







「あなた、ご飯粒ついてるわよっ」






あどけない表情で、口元の米粒をつまみ自分の口に放る。恥ずかしさでみるみると顔が赤くなってしまう。学生時代を思い出すようだ。







「パパぁ~ 顔あかいよ~?」

「ふふふ、パパは昔から恥ずかしがり屋さんでねー」






やめてくれ、2人とも。幸せすぎてどうにかなってしまいそうだから。これ以上は…!









                  ☆










「おーい、聞いてるー?」








実花さんの言葉で現実に戻ってこられたようだ。いっそあのままでも良かったんだが、まだ2人で行く末を辿りたいという思いもある。

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