第42話
「結鎖-バインドチェイン-!」
自らを悪魔と名乗るソイツは、空間から紅く染まりし鎖を取り出し、俺の身体を捕縛したと同時に、体内に入り込んだ蒼い鎖までもを臓器に巻き付けた。
ぐぅあアあ…! 直接心臓に巻き付いて、息がっ…! 苦し…ィ…! 気持ち、悪い… 何も入っていないはずの胃から物凄い勢いで何かが逆流してくるような感覚に襲われる。…ッあ! 吐きそう…オォ、ェッ……意識が遠のく…ッ…
身体と精神にまで作用を及ぼす生殺与奪の一種である“結鎖”は、宿主の意思に反する思考や行動を取ると、受動的に発動する呪いになっており、強制的に意識を奪う呪縛能力になっている。
すんでのところで意識を保ち、荒い呼吸を繰り返す。どうやら俺の精神力はわりと鍛えられているようだ。
「ケケケ、耐えたか。その身体のどこに抵抗するチカラがあるんだか…まぁ良い、オマエに与える仕事は、メスの心核を破壊しエネルギーを放出させることだ。既に破壊されし者については、虚静心核が形成されるのを待ち、速やかに破壊しろ。以上だ」
死に直面する出来事が終わりを告げ、悪魔は俺の体内に吸い込まれるように消えていった。それに伴いヤツのエネルギーを行使出来る様になったらしく、悪魔乃眼で女の子の心核を視られるようになったらしい。その能力で心核を判別し、性行為によって破壊しエネルギーを放出させると、悪魔の糧となる…らしい。
……何を言っているんだ。する訳ないだろ。愛する女性は実花さんだけなのに。他の女の子との浮気だなんて…最低最悪クズ人間のする行為だ。落ち着きを取り戻し冷静に思考すると、どんどん想いが溢れだす。
結鎖とかいう能力で外側・内側から鎖で縛りつけて、俺の心を支配しようとして失敗していた。今の俺の精神力で耐えられたらしいけど、この先またあの術を施されたら、耐えられるかどうか分からない。
俺はいったいどうすれば良いんだ………
「大丈夫…? 武くん、泣いてるの?」
快楽気絶から回復した実花さんが、心配の念を帯びた眼差しで鼻先の涙を拭ってくれる。そうされたことで緊迫の時間を過ごした際に保っていた緊張がほぐれ、一時的に止められていた感情が動き出す。
実に数年ぶりといえるような大粒の涙が溢れ出し、初めて人前で叫喚してしまうほどの“恐怖”を目の当たりにした。この場に実花さんがいてくれて良かった。心から安心して恐怖を濾過していける。
「…それで、どうしたの?」
自分が気絶していた間の状況が読めていないようだ。身体と精神に作用を及ぼすことができる悪魔が、俺の内に存在する事を言ったらまた
『終わった後、実花さんが息してないように見えて死んじゃったのかと…思ったんです…』
当たり障りのない分かりやすい解答だと思う。そんな実花さんは嘘を間に受けて我が子を抱くように、安心感を与える。しばらく抱擁を交わすと、おもむろに立ち上がる。
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