第41話

目の前に立つ存在に頭が追いつかない。膝下くらいある背丈の人ならざるものは、不敵な笑みを浮かべて自身の身体を確認している。俺の全知識をフル活用しても心当たりがない。





「このメスの心核はなかなかに頑丈だった。だが漏れ出すエネルギーをオマエに横流しして、外側と内側から破壊を試みたらすぐ…だったな」






お、おいーーー張り詰める空気の中、問いかけた声は虚空へ消えていった。何度声を出そうと試みてもそれは届くことはなかった。声が出せない。背中に黒翼を生やすそいつは、空に静止し空間から蒼い鎖を取り出す。





「精神への侵食を始める」




鎖を放ると、それは俺の身体に巻き付いた。痛みはないが、心臓に送られる血流が激しくなり息苦しくなる。やがてそれは身体の内部に入り込んでいき、何事もなかったように心臓は落ち着きを取り戻す。





「…チッ、すんなりいくと思ったが抵抗が凄いな。これでは半分もいかぬではないか…」






強い感情が流れ込んでくるようで自分の意識、理性がもろとも吹き飛びそうになった。なんだかよく分からないが、抗うことに成功したようだ。





「まぁ良い。部分侵食は上手くいったようだ。これから先はオマエの精神を一部間借りして、エネルギーを供給してもらおう」





快楽によりグッタリとしている実花さんの額に手をかざし、妖しげな術式を展開させる。






「…ケケケ、これでこのメスは本格的に虚静心核(ロートコア)を生み出し続けられる媒体となった。俺の眼で形成を見届けたら、即座に破壊しろ」






…そうか、心核の状態が明白に視えていたのは漏れ出ていたエネルギーを俺が行使していたからなのか。だから思わず考えてしまった。そんなチカラを使えるのなら、目の前のコイツをねじ伏せられるのではないか…と。夢物語のような案だと思うが、目の前で起きていることもまた現実だ。






      

…喰らえッ! 馬星烈刃バーストシャルク!!








相手の顔を掴むように利き腕で空を穿つ。だがそれは浅はかなる考えで、最初からこの者には通用しなかったのである。顔の前で行動は制止され、焼けるような痛みが全身を駆け巡る。






         

「…ケケケケ、我の悪魔乃眼アクマノメを一時的に行使できたからといって、自分で能力を行使できると思うたか? 愚かなるニンゲンよ、二度とそんな真似が出来ないようにしてやる」







絶対的なチカラの差を見せつけるために、言霊を言い放つ。

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