EP2-憑依/Possession-

第37話

帰路につくと、初めてまともに喋った同学年の女子が、自分に気でもあるかのような素振りをしてきたことにより、若干の興奮を覚えていた。これは断じて浮気ではない。これはそうだ…推しがいながらも、第2、第3の推しが出来るような感覚と似たようなものがあるかもしれない。興奮で思考が各所に行き届いていなかったが、それは浮気であることに気が付いたのは当分先のことである。






ほとぼりが冷めぬなら強制的に冷まそうと、半身をあらわにさせる。天高く聳え立つ相棒は待ってましたと言わんばかりに、自身の存在を強調する。左手で端末を操作し、オキニの女優ビデオを探す。もちろん実花さん似の超絶美女だ。準備は万端。右手付近には、箱ティッシュがいつでも取れるように完備されてある。






ビデオを再生させ、恍惚な表情をする女優の顔がアップで映し出された。そうそう、この少し唾液が口元から出てるのが唆られるんだよなぁ、と経験則から心の中で頷く。前戯は既に終わっており、両者ともに決着をつけるべく、後ろからオジャマシマス状態になっていた。男優が突くとそれに合わせて女優のボデーが跳ねる。耳を殺す幼声がより右手の動きを加速させる。





実花さんと比べてしまうと、胸が少し小さくて、蕾ちゃんがピンク寄りの薄色のため、彼女には悪いが、こっちの方がより興奮を高めてくれる。よくネット記事に載っている説では、唇の色と蕾の色が比例しているという話はあながち嘘ではないことが証明された。






だって実花さんの色、ちょっとくすんでるんだもん。人の色にとやかく言うつもりは無いが、こればかりは言わせて欲しかった。この女優さんを見ることで実践するときに、記憶を補完しておくことでより良い環境が整うのだ。








限界が近付き、一気に排出させようと女優の顔を見ながらさらに手の動きを加速させる。血管が焼き付いてしまうほどの摩擦が生まれ、今にも飛び出しそうだったハズなのに、急激な眠気に襲われ下半身を露出させたまま、眠りについたのが、昨夜のハイライトである。





目覚めたのが、午前10時。約束の時間はとうに過ぎており、実花さんの着信履歴がエゲツないことになっていた。急いで電話に出るとプンプンしており、速く行かなければ、という思いを胸に準備を済ませた。






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駅近徒歩10分の綺麗なマンション前までやってきた。女性専用マンションとだけあって、整備が行き届いているようだ。男を連れ込む際は、なるべくコッソリとが暗黙のルールらしい。エントランスに彼女の姿があり、部屋に案内された。







白を基調とした落ち着くインテリアが施されており、見るもの全てを安堵へ導く素晴らしきお部屋だ、と言っても何回も入っているので、既に見慣れた光景だ。






「…まったくもう、彼女が体調悪いのに、飲み会に行くなんてひどいよ…」



『いやてっきり来てると思ってたんですよ。俺がノンアルコール飲んだ時に倒れて膝枕して貰ってたから…実花さんかと思ったのに…』



「え? ノンアルコール飲んで倒れたの? 大丈夫だった? 膝枕って誰に? まさか女の子じゃないよね?」





情報量が多過ぎたのか、一度に処理しきれていない様子なので、順を追って説明していく。膝枕は実花さんじゃなかったのか。世の女性は疑い深いので、女の子の名前を出すと却って面倒なことになりそうなので、茶を濁すことにしよう。




『インド…田嶋晴人くんが同期の1個上の友達なんですけど、美味しそうにビールを飲むもんだから、物欲しそうに見てたんですよ。そしたらノンアルコールを勧められてイッキしたら、倒れちゃったんです』




「危ないじゃん! 例えノンアルコールって表記されてても、ほんのちょっとはアルコール入ってるんだからねっ! ノンって書いてるけどノンじゃないから!」





え? ノンアルコールはノンアルコールじゃない? 何それ国家の策略じゃん。何でも酒税の関係で、1%以下のものは全てノンアルコール括りにされるのだという。なので、法律上は0.9%で売っても問題ないのだとか。何でそんなにお酒に詳しいの? と聞いてみたところ、実花さんのお父様は酒屋の店主だという。





「ところでインドくんはなんでインドくんなの?」







という質問は、シュンキ、テルと共に考えた合作なので由来はこの3人しか知らない。結構仲間内で呼んでいるためか、他の人にもインドくんと呼ばれることが多い。理由は至ってシンプル。本名の「たじまはると」の最後を取って間に伸ばす棒を入れると、その国の世界遺産になるため、そうなった経緯を話す。実花さんは納得したように、あ~と感嘆を漏らす。

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