第31話
あられもない姿から、普段の服装に戻る。実花さんは首元に爛れたようなタケシマークが、受印されているため、予定していた図書館の自学を諦めてもらい、レポートだけを預かり受ける約束をして、ふたりで居城を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「じゃあ、心苦しいけどレポートお願いね!」
『はい、任せてください…! 試験期間中はこうやって頻繁に会えない、ですよね?』
「うーん、そうだね。でも試験が終われば、また会えるから、それまで携帯で連絡するね!」
これから試験期間中は、不用意に会わないことを約束し、もどかしい日々を送る手筈になった。少し寂しいけれど、一生会えない訳ではない。携帯で連絡し合い、試験が終われば毎日同じ時を過ごすことが出来る。まだ話してはいないが、遊園地に行く計画もある。
『じゃあ、お元気で!』
「ちょっと、やめてよー、今生の別れじゃないんだからーっ!」
笑顔で手を振る実花さん。長い長い1日を過ごす事が憂鬱であったが、新妻のように送り出されると、今日も1日頑張っちゃおっかな、という気が不思議と溢れ出してしまったので、頑張らないわけにはいかない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お、タケシ…遅かったね。昨晩はお楽しみでしたか?」
『よせやい、そんなんじゃないやい…』
長い長い1日を共にするのは、大学からの友人であるシュンキ。ほとんど同じ教科を取っているため、彼と共にこの困難を乗り越えよう。
「まだ連絡してないけど、昨日の話じゃ美扇先輩が過去のレジュメと、テスト見せてくれるんだったよね」
『そういえば、そんな話をしていたな』
「過去のテストと今回のテストの内容が、ほぼ被るとしても、このまとめの時間をちゃんと聞かないわけにはいかないよね…」
『うん、それはそうよ。過去と同じ先生なら出題はほとんど同じっぽいけど、担当が変わっていたらシャレにならんらしいからな』
「えっ…マジかよ、過去と同じ担当は…っと」
大学の予定表の中に[担当教授一覧] というものが、過去5年刻みに表記されている。それを確認しながら、お互いに1~2年前と担当が異なる教科を探してみる。
『俺は、3教科違う教授だ…2週間でこの事実に気付くなんて、絶望的だぜ…!』
「良いよねタケシは、僕なんて5教科だぞ。4年生の知り合いがいれば、事なきことを得られるが、そんな人いないし、範囲を今から模索しようにも、徹夜でなんとかなるレベルだ」
上には上がいるんだな。そんな彼に手と手を合わせて合掌。お互い血の涙を流しながら頑張ろうぜ、と誓いを立てた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます