第27話

『それは良かったです…まだ、経験がない故に自信もないですからね…』




しばらく余韻に浸りながら、ここがどうだったとか、そんな話をしながら、興味深い話へとシフトしていった。





「そういえば、ずっと気になってたんだけど、何でテニスで、スマッシュ打つ時、必殺技みたいなコト言うの?」





理由は、カッコいいからというごく単純なモノなのだが、女性にこの気持ちは分かるまい。必殺技を口に出すことで、テニスで言うスマッシュや、サッカーで言うゴールが決まった瞬間、とても気持ちいいことに気付いたのは、中学生のむつかしい時期の真っ只中に見たアニメ、の影響から今でもこうして現在進行形で、罹患しているのである。




『…ふっ、実花さんには多分、分からないですよ。男の夢ですから…!』




え、なんでー? と脇腹をつつく素振りを見せる。すごく弱いのでやめてほしいが、じゃれ合いタイムが始まってしまったので、応じるしかなかろう。




「なんで、なんでー?」

『ちょっ、ホントやめて下さいってば』




と言いつつ、俺も彼女の脇…を触るのは少し抵抗があるので、おへそを触る。実は、テニスの時からずっと触りたかったんだよな。肉付きの良いお腹は、ツルツルしており、最近鍛え始めたのか、若干腹筋が割れている気がする。指を滑らせ、感触を楽しむことにする。




「やっ…くすぐったいよぉー」


『ここがええんじゃろ? ふへへへ…』




まるで、幼き娘に忍び寄るおじさんみたいに、ニヒルな笑みを浮かべながら、スリスリするのが個人的には芸術点高めだと思う。その間も実花さんは、俺のウィークポイントを執拗に攻める。着実に3回目に備えながら、ノリノリでボディータッチを交わすふたり。お互いの飛び出るところは、完全に準備万端であり、どちらかが仕掛ければ、勝負は決する。しかし次はどっちが主導になるのか、出方を伺っていると何を思ったのか、突然実花さんの目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。





「…ぇ? な、なんで涙が…?」






自分でもよくわかっていないのか、それは、ダムの決壊を示すように、大粒の涙となって、俺の胸に吸収されていく。






『み、実花さん…大丈夫ですか…?』


「…う、うん…大丈夫…なんかヘンだね。どうしちゃったんだろう…」






突如溢れた原因不明の涙によって、じゃれ合いは一時中断を余儀なくされたが、悲しげな実花さんを放っておくわけにはいかない。なぜ涙を流したかは分からないけど、俺が……。






『大丈夫ですよ…俺が側に居ますから』


「…うん、うん……」






ふたりは強固にお互いを感じながら、目を閉じるのであった。

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