第20話

彼が言い放った技? よく分からないけど、それが放物線を描いて、りんちゃんの足元に弾んだのは鮮明に覚えている。その瞬間、スマッシュが成功したんだと知って、自分の事のように喜んだね。テルくんなんか、少し涙を流して、胴上げをしていたよね。それが嬉しくって、感動したのは良い思い出だよね。






それでかな、後輩である彼を意識するようになったのは。好き…と言うわけでは無いけれど、恋愛対象に入ったって感じなのかな。








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「へぇ~ 見かけによらず成本くんって、男らしいのね」






『み、実花さんっ! そんな恥ずかしい話を細部までするなんて、ひどいですよっ!』






「ふっふっふ、サユと私たちの恥ずかしい記憶は、これで手打ちって事になるね」







舌をペロッと出してごめんね、と俺にしか見えない角度で謝る実花さん。なにそれ可愛いんですけど。






「あ、そろそろ終電過ぎちゃうんですけどっ! 古林先輩! 今日はここまでにしましょう!」




さゆ先輩が慌てた様子で話を中断させる。




「おっ? おおー! 気付けば楽しい時間はこれでおしまいだとはなー! 試験前最後の飲み会はこれにて閉幕だ。次回は試験後の打ち上げにて、頑張りを労う会を開こうじゃないか! 物足りないやつは俺についてこい! 解散だぁぁー!!」





最後の乾杯を果たして、皆それぞれ帰り支度を始める。さゆ先輩は小声で俺に「楽しい時間をありがとう」と言ってくれた事だし、良しとしましょう。





居酒屋を後にし、皆それぞれ帰路につく。俺とシュンキは明日まで履修があり、さくま先輩は今週末から実技と試験があり、他の人たちは試験まで各々勉強をするのだろう。







「じゃあなタケシー! 俺らは俺らでヨロシクするから、頑張れよー!」

「さ、さよなら実花せんぱいっ! わ、わたしがんばりますっ!」



「タケシー! 明日2限目からだし、朝少しだけ時間空いてるからと言ってハメ外しすぎんなよーっ!」

「お前のメアドに、必要なレジュメのコピー送っとくから、頑張れよー!」




などと多様な返事が返ってきて、ツッコミ所は様々だったが、みな元気に踵を返していった。






「武くん…明日、講義あるんだっけ…?」




『あ、ありますけど…今は実花さんとずっと一緒にいたいです…!』






みんなが去った後を確認して、胸にしまっていたアマエンボサンを取り出す。すると実花さんは、少し酔っているのか、手を絡めて機嫌を良さそうにしている。






「んじゃあ武くん…行こっか」







それは実に、魅力的な提案だった。

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