第18話

りんちゃんの第一作戦が決まったところで、もうそろそろテニスの約束があるので、お会計を済ませ、2人で大学へ向かう。その間、緊張しっぱなしのりんちゃんを宥めつつ、なんとかコートに入るのであった。






先についていた1年生2人と、彼らの友達である君津くんと田嶋くん、りんちゃんの友達である高良さん、テルくんの取り巻きの女の子たち大勢が準備をしていた。 今日は珍しく人数が多く、試合でもやるのかな? と私も燃えていた。






ウチのサークル長である古林先輩は、気分で行動することが多く、テニスをするなんてことは月に1回も無いことの方が多いのである。 そんな先輩がテニスをするのだから、珍しいことこの上ない。







「急で悪いんだが、今年も夏合宿のためのトーナメント戦を来週から行うことにする。上位10組がそれに参加できる権利を有する。試合形式は、男女混合ダブルスなので、組む相手を決めておくように! もし足りなかったり余ってしまったらその人は審判に回ってサポートしてくれ!」








夏合宿…? あぁ、去年は近くの滝でキャンプっぽいのしてたもんね。さゆ達とワイワイはしゃぐ予定だったけど、肝心のさゆが親戚の不幸で行けなかったから、私も辞退したんだよね。







さっそくペアを決めようと、女の子たちがテルくんの周りを囲む。りんちゃんが出遅れてしまい、小さくため息をつく。その様子を見てか成本くんが近付いてくる。





「安原さん、どうしたの、元気ないね。トーナメント戦なんだけど、女子で組む人いないから僕と組まない?」





ナイス武くん、と心の中で親指を突き立てた。りんちゃんも顔を上げて目をキラキラさせている。作戦を遵守するなら、武くんと組まなきゃね。







「う、うん! 私で良ければ!」







これでペアが成立して一安心。まだ囲まれているテルくんの方を見ると、武くんに先を越されて悔しがってるように見えなくもない…? いや分からないね。








「じゃあ、ジャンケンで勝った人が俺とペアになってくれ」






諦めたように口を開くと、女の子たちは我先にとジャンケンを始める。勝敗がついたのかひとり、またひとりと側を離れ、最終的に1人が残った。その子は攻撃的な目が特徴的で、なんとも形容しがたい子だ。この子の彼氏になる子は相当大変そうだなぁと、見た目で判断してしまったが、間違いではないと思う。






さて、私は組む人が居ないので進んで審判にでもなろうかな、と考えてみんなとテニスを始めるのであった。










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「ふぅ、成本くん、最初に比べてかなりフォーム良くなったね!」



「え、本当に! 嬉しいな、上手い人にそう言われるなんて! 暇な時に練習しておいて良かったよ!」



「練習してたんだ! だからだ!」



「ちょっとちょっと、褒めても何も出ませんってよ」






おほほほ、うふふふ、と笑い合う2人。意気投合してバッチリ仲良くなってるね。






『じゃあ次はスマッシュを打ってみようか』



「スマッシュ…ですか。他の技術とは違って感覚が掴めないんですよねー」



「まぁ、確かに慣れるまでに、時間は掛かるけど、今の成本くんだったら、習得出来るんじゃない?」



「うーん、フォームとか、構えを頭で考えながら、球を弾くんですけど、なかなか強撃出来ないんですよ」





初心者あるあるなのが、フォームを気にする必要があるのでスマッシュが、思うように撃てないのが悩みの種で、私も何度挫けそうになったか分からない程である。





「ふっふっふ、成本くん…スマッシュを打つには、ね。こうパスン! と振り下ろせばこんなに小さい私でも高威力のスマッシュが打てるんだよ!」






りんちゃんが擬音混じりに力説するも、それは感覚の問題では? と首を傾げる武くん。






仕方がないから、私が教えようと武くんの背中に身体を近付ける。





『まずは横向きになって足を肩幅まで開いて、右利きなら腕を最大限引いてーーーって話、聞いてる?』

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