第17話

私たちの出会いは、そこから始まった。ファーストインプレッションは、りんちゃんに次ぐ可愛い後輩たちが入ってきたな、という感想を持った。





あれから1ヶ月が過ぎ交流が進み、私たちはまるで高校生の時みたいな、サークル内の仲良しグループとして君臨していた。呼び名も変わってテルくんは、私のことを名前呼びしてくれるようになったが、武くんの方は、女の子にあまり慣れていないからか、名字呼びで留まっている。





そんな男女の友情グループを代表していた私たちに、嬉しい一報が入る。それはりんちゃんからの恋愛相談だった。なんとなく私たちの間柄でも、“恋愛” と言うワードは、避けられていて(と言ってもりんちゃんが興味なかったってのもあるけど)話す機会が無かったけれど、りんちゃんはモッテモテルくんを見て、心がざわついてしまい、相談を決意したのだという。







「あ、あの…実花せんぱい…や、山坂くん…の事で、そ、相談…が、ありま…す」







『どうしたの? そんなにカタコトで…あ、もしかしてついに、りんちゃんテルくんの事、好ーーー』







言い切る前に、私より一回り小さいおててで口を塞いでみせた。なーにこれ、クリームパンみたいだから食べちゃおっかなー? と考えていたけれど、本人は真剣な様子だったので、ここで茶化すのは真意に反する。






「み、実花せんぱいっ! 声が、声が大きいです! す…好きかどうかは、まだ、分からないですけど…ついつい目で追っちゃうとか…他の女の子と話しているところを見ると、モヤモヤしちゃうとか…ですよ」






大学の近くの喫茶店で、テルくんの思いを告白するりんちゃん。りんちゃん、それは恋だよ。 紛れもない初恋だよ。私もそんな時期があったっけなー、と感慨深い当時のことを思い出してしまうが、純粋な初恋と私の恋は対極相反するので、早々にご退場願います。変に思い出して私の方が、モヤモヤしちゃうから、今はりんちゃんとのお話に集中しなくちゃ。







真剣なりんちゃんに向き合い、口を開く。









『りんちゃん、それは…恋だね』










こ、これが恋なんですか…!? と目を丸くして驚くりんちゃんも可愛い。純粋な乙女が、恋を自覚する様子がなんとも微笑ましく思う。この恋を成功させるために、私はりんちゃんに何が出来るであろうか。純粋な恋愛をしたことがないから、アドバイスに欠けるかもしれない。それでも私は、りんちゃんの成功を心から願ってるよ。








「実花せんぱ~い…そうなると私、ライバルが多すぎますぅー…山坂くんの周りに女の子が多すぎて、近付けないんですよー…話そうにも恥ずかしくて……」








あぁ、なんて可愛いのかしらこの子は。私が男の子だったらこの瞬間、抱きしめているのに。チャンスが無かったら作れば良いだけのこと。しかし、奥手なりんちゃんには、ちょっとレベルの高い所業なのは間違いない。でもなんとなく思うんだけど、テルくんもりんちゃんのこと少し気になってると思うんだよね。どうにか私に気付かれないようにして、視線送ってることもあるし。そこで私は、りんちゃんにある提案をする。






『武くんとは、恥ずかしがらずにお話できるの?』

「成本くんですか…? 彼とは友達なので気負いなく話せますよ」

『それなら、テルくんの居る前で武くんと、お話してみれば、気をこっちに向けられるんじゃない?』

「え、それはつまり…」







テルくんが少しりんちゃんに気があることを見越して、この作戦を伝えることにした。 名付けて「嫉妬で振り向いちゃうかもね」作戦である。いくら女の子の扱いに慣れてるとはいえ、普段とは違うアプローチをされたら、男性側もドキッとするに違いないと、睨んだのだ。ガンバレリンチャン!

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