第15話
そんなこともあり、大学に通い始めてから何となく男の子との接触を避けて、恋愛をしないまま2年生になった。そんな中、高校の頃の後輩が私を追いかけて、同じ大学に通う事を知り、テニスサークルでまた一緒にテニスができることにワクワクしていた。
そして、新入生歓迎会の時に後輩のりんちゃんと久々の再会を果たした。
「実花せんぱいっ! 卒業式以来ですね! 髪切りました? とても似合っています! 可愛いです! またせんぱいと一緒にテニスが出来るなんて夢のようです!」
実はちょくちょく、連絡をとっていたのだが、顔を見るのは私の高校の卒業式以来だった。お互いバイトや試験や部活で大忙しだったため、久々の顔合わせだ。りんちゃんは、昔と変わらず、ツインテールが似合っており、動くたびにツインテールが揺れて、とても可愛い子だ。
『相変わらず、元気だねーりんちゃんは』
反応を待たずにイイコイイコと頭を撫でると、気持ち良さそうに震える。小犬みたいな子だけど、テニスの試合になると私をサポートする頼もしきパートナーとして、一心同体の動きをこなしてしまうから、今の状態だととても考えられないんだよね。
「安原、その様子だと久々に飼い主に会えた子犬に見えなくもないぞ?」
「安原さん、良かったねー大好きな先輩と再会することができて!」
「う、うるさいよ2人とも…こっちは久々に会えて感動してるんだからっ!」
…大好きな先輩、ね。りんちゃんが私のことをそんな風に思ってくれてるなんて、とても嬉しかったよ。私もあなたのことを大切に思っているよ。
この2人…山坂照式くんと成本武くんは、東陽高校出身で昔からの仲良しらしく、息がピッタリだった。りんちゃんと私は、西月高校出身なので、新鮮なノリだった。
『君達は何でテニサーに入ろうと思ったの?』
文系大学のテニサーは、十中八九ヤ○サーと化すことが多く、テニスそっちのけで飲み会を開き、泥酔クラブになることが多い。もちろんこの大学にも一部の人がそういうことをしているのは周知の事実である。キラキラしててイケイケなこの2人もソレ目的で入ったに違いない、と見立てていた。でも、
「高校生の時、たまたま友人のテニスの応援で西月高校との試合を見てたんですけど…友人そっちのけで西月の子ばっかり見ちゃってて、テニスを楽しくプレイしてるのを見てキラキラしてるなぁと思ってーーー」
「ふっ、タケシはその子を追って北峰に来たんだもんなぁ。その子に会えると良いよなー。」
成本くんの言葉に相乗する山坂くん。その子を追って北峰に来たってことは…?
『その子は今この大学にいるの…?』
「…確か、去年の引退の優勝インタビューで地元の大学に通う予定だって言っていたので、半分の確率ですけど北峰に来ました。顔は忘れてしまったので、ここに居るかも分かんないですけどねー」
「くっふふ、いやあ、その子は今どこにいるんだろうなぁ…? くふふ…」
山坂くんは含みのある笑いを堪えきれずに、吹き出していた。その引退インタビューは覚えている。というかそれ、過去の私だ。山坂くんは成本くんの想い人の正体に気付いてて、笑ってるんだ。しかし、成本後輩はそんな山坂くんなど目にもくれず、ウーンと悩み出し、ご尊顔を思い出そうとしているのかな。
ちなみに兄南大学は、理系の大学でありスポーツサークルはひとつも発足していなくて、テニスサークルは無いのだが、他の人が教えてくれるか、兄南のサイトを見ない限り、それに気付くことは無いと思われる。
『…ふふ、その想い人…見つかると良いね!』
「は、はい、ありがとうございます!」
まさか、対面して話している人物こそがその想い人だろうとは思うまい。この事実に気付いているのは、山坂くんと私本人だけなのだから。りんちゃんは恋愛関係の話は、どこ吹く風状態なので、そっぽ向いちゃってるし。
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